浜松ホトニクスは,世界最小の光電子増倍管であるマイクロPMT(ピーエムティー)を樹脂でパッケージし,電子基板に実装できるパッケージタイプのマイクロPMT「R12900U」を製品化した(ニュースリリース)。2019年10月1日発売,価格は28,000円(税別)。
同社は2010年に,半導体製造技術であるMEMS(微小電気機械システム)技術により,一般的な光電子増倍管と同等の性能で,指先に乗るほど小型な光電子増倍管であるマイクロPMTを開発した。
マイクロPMTは,単体では非常に小さく配線もないため,電子基板に実装するのは容易ではない。また,動作には,900V程度の電圧をかける高圧電源回路や電子増倍部に電圧を分ける分割回路が必要になる。
そのため同社は,周辺回路と組み合わせ,機器に組み込みやすいモジュールタイプのマイクロPMTを製品化し,販売してきた。そのような中,現在の医療診断機器や環境分析機器などをさらに小型化するため,設計自由度を高めることができる,より小型なタイプへの要求が高まっていた。
今回,同社は周辺回路をなくし,従来のモジュールタイプに比べ,体積で約9分の1まで小型化するとともに価格を抑えたパッケージタイプを製品化した。また,パッケージ化したことで容易に電子基板に実装することができる。
これにより,機器の大きさや形状などに合わせ周辺回路や部品を配置できるなど設計の自由度が高まり,顧客の求める狭くて薄いスペースや測定点が複数近接するような機器内での使用が可能となるという。
主な仕様は,単位光電面有効エリア(W×H)4.0×1.0mm,感度波長範囲300-650nm,質量1.1g,最大供給電圧1,150V,最大平均陽極電流5μA,寸法(W×H×D)14×14×3.5mm。
同社は,この製品により,ベッドサイドで即時に結果がわかる小型な医療診断機器や,環境汚染現場まで持ち運べる携帯型の環境分析機器などの実現が期待できるとしている。