東京大学の研究グループは,強い,照りつけるような日差しに対して,葉がどのようにその中の構造を変えて適応しているのかを明らかにした(ニュースリリース)。
植物の葉の光合成は,弱い光の場合と強い光の場合とでは,光を吸収するのに適した葉の厚さは当然異なる。そのため古くから,植物は光の強度に合わせて葉の厚さを変化させることが知られていた。
今回研究グループは,モデル植物であるシロイヌナズナを使って,その葉の厚さがどういうステップを踏んで決まるのか,解明に取り組んだ。シロイヌナズナの葉は,できあがるまでの初期段階では大変小さく,通常の観察方法では真っ直ぐ垂直な断面を見ることすら困難。これを今回,顕微鏡技術を工夫することで解決し,時系列で詳細に観察した。
その結果,強い日差しに適応した厚さを持つ葉(陽葉)では,まず細胞が葉の厚さ方向に伸び,それが二層に分裂することで厚さが増し,そして青い光の成分で促進されることが明らかになった。
さらに後半の過程では,光の量に関わりなく細胞が肥大して厚さが増し,それは供給される糖の量でコントロールされていることが判明したという。
植物によっては光の量に応じてこうした厚さの変化をするのが得意で融通が利く種類と,そうでない種類がある。光環境に対して融通の利きにくい種類は,人が栽培をする際,光の量を適切に保ってやらなければならず,管理に手間がかかる。
研究グループは,今後こうした葉における融通の仕組みがさらに正確にわかれば,種類ごとの光環境に対する個性の理解が深まり,環境保護の方策に大きく役立ち,さらに作物の管理にも将来的に役立つとしている。