天文台ら,近赤外線高分散分光器で星間物質を測定

国立天文台らの研究グループは,近赤外線高分散分光器「WINERED(ワインレッド)」を京都産業大学神山天文台の荒木望遠鏡に搭載し,はくちょう座OB2星団中のNo.12という星の分光スペクトルデータを取得,解析し,C2,CNによる近赤外吸収バンドの検出に成功した(ニュースリリース)。

銀河円盤を満たすガス状の「星間物質」は,星形成が起きる現場・星の材料として,また銀河スケールでの物質循環を理解する上でも重要な研究対象。

星間分子の中でも,基本的な二原子分子のひとつであるC2分子(C2)とCN分子(CN)は,星間物質中における分子の反応過程において重要な役割を果たしている。加えて,その分子特性を利用すると星間物質の温度や密度を高精度に推定することもできるため,これまで特に太陽近傍の環境で詳しく観測・研究が進められてきた。

しかし,従来これらの分子の観測に用いられてきた可視光波長域の星のスペクトル上に検出される吸収バンドは,星間塵による強い減光(星間減光)を受けるという大きな欠点があり,観測できる領域が限られていた。

今回,研究グループは星間ガス雲による強い減光を受けている大規模な星の集団「はくちょう座OB2星団」の星を観測することで,近赤外線波長域に見られるC2とCNの近赤外吸収バンドを星間ガス雲中で初めて検出に成功し,これら分子の特性を利用することで星間ガス雲の温度・密度という重要パラメーターの高精度な測定に成功した。

今回の研究に用いたWINEREDは,京都産業大が東京大学や関連企業と開発した,世界トップレベルの感度を誇る近赤外線高分散分光器。波長範囲は近赤外波長域(0.9-1.3μm)で,WIDEモード(波長分解能=28,000)とHIRESモード(波長分解能=70,000)の2つの観測モードを有し,従来の赤外線分光器では困難であった非常に微弱な吸収の高精度測定が可能とする。

またC2分子の同位体分子種である「12C13C」の検出にも初めて成功した。同位体比は分子の生成・破壊に関わる化学反応に敏感なパラメーターだが,これまではC2分子の同位体比は測定することができなかった。

研究グループは,今後多くの天体で観測を進めていくことによって,星間物質中の化学反応過程に新たな知見がもたらされることが期待できるとしている。

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