キヤノンと京大,自己由来iPS細胞の共同研究を開始

キヤノン,キヤノンメディカルシステムズと京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は,より高品質な自家移植用のiPS細胞(my iPS細胞)の実現により,再生医療分野に貢献していくことを目的として,2019年8月1日より共同研究を開始した(ニュースリリース)。

再生医療は,体外で人工的に培養した細胞や組織を体に移植するなどして,病気や怪我などで失われた臓器や組織の機能を再生し,状態を回復させる医学技術で,これまで有効な治療方法がなかった疾患の治療が期待されている。

iPS細胞は,人間の皮膚などの体細胞に,ごく少数の因子を導入し,培養することによって,さまざまな組織や臓器の細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性幹細胞に変化する「人工多能性幹細胞」のこと。iPS細胞は,再生医療の普及の鍵となると同時に,病気の原因の究明や新薬の開発など医療の発展に向けたさまざまな活用が見込まれている。CiRAでは,2013年度から再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトを推進し,細胞製造を行なう施設であるFiT(Facility for iPS Cell Therapy)において,再生医療用の原料の細胞となるiPS細胞ストックを製造している。

現在CiRAは,再生医療のさらなる普及に向けて,患者自身の細胞から作ることで拒絶反応を起こすリスクが少ない「my iPS細胞」の実現に向けた取り組みも進めているが,その実現には品質の保証されたiPS細胞を,短期間で安定的にかつ安価に供給できる新たな技術の確立が不可欠となる。iPS細胞の製造工程においては,遺伝子検査をはじめとする各種検査のコスト低減や,iPS細胞の分化能(どの臓器や組織に分化するか)を簡単かつ効果的に判別する指標(マーカー)の確立が課題となっている。

共同研究では,キヤノングループの光学技術や計測技術,画像診断技術により,低コストな検査手法の開発,およびiPS細胞の分化能を判別するマーカーの探索に取り組んでいくという。さらに,同グループの品質管理技術や製造技術を活用し,iPS細胞の品質に影響を与える因子を特定・制御することで,高品質と安全性を保ちながら,iPS細胞製造の低コスト化と期間短縮の実現を目指していくとしている。

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