沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,膜電位を使って脳の活動を測定するイメージング法をまとめた(ニュースリリース)。
研究グループは,20年にわたる研究を「膜電位イメージング」法の入門として「Frontiers of Cellular Neuroscience」にまとめた。この研究は蛍光色素標識と顕微鏡を多角的に組み合わせて脳の活動を視覚化するもの。これにより培養組織及び覚醒している動物のいずれでも,個々のニューロンと脳の切片全体を研究することができる。
活動中の脳を画像化するためにはまず,蛍光色素を組織またはひとつの細胞に注入する。色素分子の蛍光色は光センサーによって検出される。次に細胞膜に素早く電気ショックを与える。電気ショックにより細胞膜が瞬間的に開かれ,色素分子が膜を通過し,細胞内に送りこまれ,この色素分子を利用する。
蛍光色素分子は常に発光し,脳細胞が活性化されるとインパルスが細胞に沿って移動する。これにより,色素分子の電子構造と発光強度が変化する。研究グループは,センサーを用いてこの変化を検出し,脳内で何が起こっているのかについて調べる。
昨年,この研究によって研究グループは,覚醒しているマウスの特定のニューロンがどのように活性化されるかについて世界で初めての視覚化に成功し,脳細胞による情報処理の重要なステップが明らかになり,行動がどのように発現するかについての示唆が得られた。
この方法は,ナノ秒というごく短時間で脳の活動の変化を必要に応じて素早く捉えられるという。研究グループは,使用される蛍光色素は脳内に安全に数週間とどまるので,より複雑で長期に及ぶ研究が可能になるとしている。