東北大,光刺激で上皮細胞のつなぎ替えを可視化

東北大学は,オプティカルバイオロジーとライブイメージングの手法を用いて,ショウジョウバエの体の器官を形成する上皮細胞が,集団移動するのに重要な,細胞のつなぎ替えを可視化することに成功した。(ニュースリリース)。

ヒトの体の表面である上皮組織は上皮細胞と呼ばれる細胞が密接に接着した状態で構成されており,例えば受精卵から体が形成される過程では,上皮組織内の上皮細胞が同一方向に集団移動することで,シート状の上皮組織を折りたたみ,伸長・陥入・移動などの変形を行ない,複雑な器官を作り上げる。

しかし細胞同士の接着を保ったまま,どのように上皮細胞が移動できるのか,どのように同一方向に協調的に動くのか,その仕組みの多くは不明だった。

研究グループは,上皮細胞をつなぐ接着部分でアクトミオシンが偏って集積することで,細胞同士のつなぎ替えが連続して起こり,上皮細胞が集団移動する原動力となっていることを明らかにしていた。

今回,この細胞同士のつなぎ替えの過程をライブイメージングにより詳細に可視化したところ,細胞間接着を縮めて消失したはずのアクトミオシンは,消失することなく,新しい細胞接着面を作る際の接合点で再利用されていることがわかった。

また,細胞接着面が新たに伸長しているタイミングで,特定の波長の光を当てることで特定のタンパク質の活性を変化させ,狙った細胞の機能を光で制御する方法である,オプティカルバイオロジーの1つの手法としてCALI(Chromophore-assisted laser inactivation)を用い,細胞接合点にあるアクトミオシンだけを不活性化した。

CALIは,光刺激によりReactive oxygen species(ROS)を産生する蛍光たんぱく質を,不活性化させたいたんぱく質Xに融合させて発現させることで,光特異的にたんぱく質Xを不活性化させる方法。この結果,新しい細胞接着面の伸長が遅延することが明らかになった。

さらに研究グループは「ジッパー」のように機能し,上皮細胞の接着を破ることなく,細胞接着面の伸長を促進する膜たんぱく質(Sdk)も発見した。

研究グループは今回,光を用いて人工的にアクトミオシンの操作を行なうことによって,瞬間的に方向性をもった細胞の力発生メカニズムを解明することが可能になったとし,今回の研究がきっかけとなり,オプティカルメカノバイオロジーの利点を生かした次世代の生物学研究が増えることが期待できるとしている。

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