東京工業大学とNTTアドバンステクノロジの研究グループは,複数の金属層で形成される積層メタル構造を用い,超低雑音・超高感度特性を有するMEMS加速度センサーの開発に成功した(ニュースリリース)。
加速度センサーはスマートフォンなどの民生市場や社会インフラ全般のモニタリング用途の拡大に伴い,今後も大幅な需要増加が見込まれる。これらの小型・量産可能な加速度センサーでは,製造プロセスが確立したシリコンMEMS技術が広く普及している。
しかし,加速度センサーの機械構造に由来する雑音は可動電極(錘)の質量に反比例するため,サイズ小型化と低雑音化にはトレードオフが生じる。さらに感度はおおよそサイズに比例するため,サイズ小型化と高感度化にもトレードオフが生じる。加速度センサーの高分解能化には低ノイズ・高感度性能が必要なため,従来の小型シリコンMEMS加速度センサーでは1μGレベルの検出が困難だった。
研究グループはこれまで,金材料を用いてMEMS加速度センサーの錘を10分の1以下に小型化する手法を提案している。今回はこの技術をさらに発展させ,複数の金属層から形成される積層メタル構造を錘やばねに用いることで,超低雑音・超高感度特性を有するMEMS加速度センサーを開発した。
具体的には複数の金の層を重ねて錘を形成することで,面積あたりの錘質量を増やし,錘質量に反比例するノイズ(ブラウニアンノイズ)を低減した。さらに,その錘の反りを低減することで,4mm角チップ面積を最大限利用した静電容量センサーを実現し,感度(加速度あたりの静電容量変化)を増大した。
この結果,従来の同サイズセンサーと比較して感度100倍以上,ノイズ10分の1以下を達成した。これにより,超小型センサーによる1μGレベルの検出の見通しを得た。MEMS作成には半導体微細加工技術と電解金めっきを用い,集積回路チップ上に今回開発したMEMS構造を形成することも可能なため,超小型加速度センサーの高分解能化・汎用化技術として期待できるという。
研究グループは,超小型加速度センサーの高分解能化・汎用化は,医療・ヘルスケア,インフラ診断,移動体制御,ロボット応用などさまざまな動き検知用途において新しいデバイス・システム開発につながるとしている。