京都大学は,国立天文台,兵庫県立大学,米ワシントン大学らと共同で,年を取り自転の遅くなった太陽のような星でも,最大級の太陽フレアの100倍に達するスーパーフレアが数千年に1回の頻度で生じうることを示した(ニュースリリース)。
太陽の表面では,爆発現象(フレア)が頻発し,磁気嵐などの形で,地球や社会にも大きな影響が及ぶこともある。以前,研究グループは,ケプラー宇宙望遠鏡の取得した多数の恒星の観測データの解析により,最大級の太陽フレアの100倍を超えるようなスーパーフレアが太陽でも発生する可能性を発表した。
しかし,ケプラー宇宙望遠鏡による星の明るさ変化のデータだけでは,発見されたスーパーフレア星が本当に太陽のように自転の遅い単独星なのか,連星や準巨星など太陽と異なる性質の星が混入している可能性はないのか,という根本的な点において疑問が残っていた。
そこで今回の研究は,高分散分光観測(米アパッチポイント天文台3.5m望遠鏡やすばる望遠鏡)と衛星「ガイア」(可視光で全天の天体約10億個の位置と距離を測定する宇宙望遠鏡)の半径データという新たな手法とデータを最大限活用し,詳細な検証を行なった。
まず分光観測では,ケプラーで発見された約300個のスーパーフレア星のうち明るい64星のデータを用いて,波長スペクトルの中に現れる多数の吸収線の詳細な分析を行ない,2つの星の成分が重なって見えたりしないか(=連星系の兆候は棄却できるか)を確認し,43星について単独の太陽型星であることを確認した。
その上で,吸収線のドップラー効果による広がり幅から星の自転速度を測定する等の解析を行ない,ケプラーで発見されたスーパーフレア星の中に,太陽と同程度に自転の遅い単独星が含まれることを確認した。続いて,ガイア衛星によって得られる多数の星の距離データから,星の半径の導出を行なった。
これにより,正確に太陽と似ている星といえる星のみを用いて,ケプラーデータを用いたスーパーフレアの統計的な研究について再検討した。その結果,年を取り自転の遅くなった太陽のような星でも,最大級の太陽フレアの100倍に達するスーパーフレアが数千年に1回の頻度で生じうることが,より確かな結果として示された。
その一方で,スーパーフレア活動の星の年齢に伴う変化についても特徴が明らかになった。太陽誕生直後の時期(年齢数億年)は太陽の自転速度も速いため,現在の太陽と比べると,100倍を超えるような頻度でスーパーフレアが頻発していたこともわかってきたという。
研究グループは今回の研究結果は,年齢に伴うフレア活動性の変化や惑星への影響等の観点でも重要で,太陽及び恒星物理学だけでなく,惑星大気組成への影響などの観点も含めて広く関連分野の進展に寄与しうる内容であるとしている。