新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO),シャープ,トヨタ自動車は,高効率太陽電池を電動車に搭載することによる,EV航続距離や燃費向上効果の検証を目的とした,公道走行実証を2019年7月下旬から開始する(ニュースリリース)。
NEDOは,2016年4月に産学の有識者からなる「太陽光発電システム搭載自動車検討委員会」を設置し,運輸分野のエネルギー・環境問題の解決を目的として,太陽光発電システム搭載自動車に関する調査・検討を行なってきた。
同委員会には,シャープやトヨタも参加しており,これまでの成果として,「変換効率30%以上の太陽電池モジュールを使用すれば,自動車のような限られた設置面積においても,1kWの発電電力を実現することが可能」「ユーザーの利用パターン次第では,年間の充電回数をゼロにすることが可能」「CO2排出量削減効果が期待できる」と試算している。
今回の実証を行なうにあたり,シャープはNEDO事業の一環として開発した世界最高水準の化合物3接合型高効率太陽電池セル(変換効率34%以上)を車載用にモジュール化して太陽電池パネルを製作した。この太陽電池セルは約0.03mmの薄いフィルム状であるため,自動車のルーフやフード,バックドアなどの限られた設置面積においても,曲面形状に沿って効率よく搭載することができる。
トヨタは「プリウスPHV」のルーフやフード,バックドアなどに同パネルを搭載し,定格発電電力を約860Wまで高めた公道走行用実証車を製作した。大幅に発電電力を向上させたことに加え,「プリウスPHV」では駐車中にのみ行なっていた駆動用バッテリーへの充電を,実証車では走行中にも行なえるシステムを採用し,EV航続距離や燃費の大幅向上を見込んでいる。
またトヨタは,愛知県豊田市や東京都などにおいて,さまざまな走行条件下で走行実証を行ない,太陽電池パネルの発電量や駆動用バッテリーへの充電量などのデータの検証を通じて,今後の車載ソーラー充電システムの開発に活かすとしている。
実証データの一部は3者で共有し,NEDOが主催する「太陽光発電システム搭載自動車検討委員会」などで,CO2削減効果をはじめ,充電回数低減などの利便性向上効果などを評価し,運輸部門を含めた太陽電池パネルの新規市場創出とエネルギー・環境問題解決へのさらなる貢献を目指すとしている。
なお,この実証車は2019年7月10日から12日までパシフィコ横浜で開催される「第14回再生可能エネルギー世界展示会」のNEDOブース内に展示する。