NICTらの量子鍵配送ネットワーク,ITU-T勧告に承認

情報通信研究機構(NICT),日本電気(NEC),東芝の3者が開発してきた量子鍵配送ネットワーク技術の成果を盛り込んだ国際標準勧告が,2019年6月28日ジュネーブにて開催されたITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)SG13(ネットワーク基本構成に関する事項)会合にて,Y.3800(量子鍵配送をサポートするネットワークのフレームワーク)勧告として承認された(ニュースリリース)。

量子鍵配送(QKD)は,光の量子力学的性質を用いることにより,理論上いかなる計算能力を持つ第三者(盗聴者)にも情報を漏らすことなく暗号鍵を離れた2地点間で共有する方法として,世界各国で研究開発が進められてきた。近年,大手通信会社が量子鍵配送ベンチャーに巨額の投資をするなど市場拡大に向けた機運が高まっており,量子鍵配送ネットワークの標準化が求められていた。

日本では,この3者が中心となり,世界最高性能のQKD装置を開発するとともに,2010年に構築した実証テストベッド「Tokyo QKD Network」上でネットワーク技術の開発,長期運用試験,さまざまなセキュリティアプリケーションの開発に取り組んできた。3者はこれらの成果をQKDネットワークの基本構成と機能,サービス手順などに関する勧告草案としてまとめ,2018年9月に寄書を提出,その後この寄書を基準文書として標準化活動を主導してきた。

2019年5月には,NICT本部にて,QKDネットワークを集中的に議論する中間会合を開催し,議長として参加国の意見を取りまとめ,Y.3800の完成に貢献したという。これを受けて2019年6月28日ジュネーブにて開催されたITU-T SG13会合にて,Y.3800がITU-T勧告として承認された。

この勧告は,量子鍵配送ネットワークの要求条件,及び基本構成と機能などを規定する勧告で,量子鍵配送関連として初の国際標準化に向けたITU-T勧告となる。ITU-Tでの国際標準の成立により,量子鍵配送を用いた秘匿性の高い暗号通信サービスの実用化と普及が加速するとしている。

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