古河電工は,大型放射光施設のSPring-8を活用し,超電導に分散された数nmの人工ピンを高精度で測定する手法を確立した(ニュースリリース)。
同社の子会社であるSuper Powerは,高温超電導線材の開発と製造を行ない,高い磁場中でも臨界電流を低下させない線材を提供している。
高い臨界電流密度の線材を製造するためには,磁束量子の制御が必要。超電導線材をコイルにして強力磁場発生装置として用いる場合には,線材中に強い磁場が加わる。超電導材料に磁場が印加されると磁束量子が形成されるが,電流を流すことにより磁束量子がローレンツ力で動き熱を発生させ抵抗を生じる。
そのため,磁束量子を適当な常伝導相にピニングさせる必要があり,人工ピンを用いる。人工ピンの大きさは数nmと非常に小さいため,電子顕微鏡以外の適切な解析手法が存在しなかった。
今回,同社は異常X線小角散乱法による高精度な超電導材料中の人工ピン解析手法を確立することに成功した。異常X線小角散乱法はX線の異常散乱現象を利用する小角散乱法で,今回の研究では,人工ピンを構成するジルコニウムの異常散乱現象を利用して,散乱強度を数倍に強調させた。原理的にSPring-8等の放射光施設を用いる必要がある。
この手法は,人工ピンの大きさ・密度を高い精度で解析することができるため,新しいコンセプトの人工ピンの設計指針を得ることができるという。また,製造プロセスにフィードバックを行なうことにより,超電導製品の高信頼性化に貢献することができるとしている。