東大ら,ホログラフィー原理で対称性の破れを証明

東京大学は,米マサチューセッツ工科大学と共同で,重力と量子力学を統一する理論では,素粒子論の重要な原理であった対称性がすべて破れてしまうことをホログラフィー原理を用いて証明した(ニュースリリース)。

宇宙が始まった当初,「電磁気力」「強い力」「弱い力」「重力」の4つの力が全て統一されていたと考えられている。ミクロの世界を記述する量子力学を基礎とした理論を用いて,「電磁気力」「強い力」「弱い力」の3つの力については統一的に説明できるが,重力を含めた4つの力も含め統一的に説明する理論についてはさまざまな面から研究が行なわれている。

例えば,物理学にとって重要な「対称性」の概念について,量子力学で成り立っている「対称性」が重力を組み合わせてしまうことで成り立たなくなることが以前より指摘されていた。しかしこの指摘について厳密な証明はされておらず,推測の域を出ていなかった。

ホログラフィー原理のなかでも,1997年にプリンストン高等研究所のファン・マルダセナ氏が発表したAdS/CFT対応は,ホログラフィー原理を数学的に厳密に定義した代表的なものとして知られている。研究グループは,今回の証明にあたって,このAdS/CFT対応と「量子誤り訂正符号」との間に近年発見された関係性を用いるという新たな手法を用いた。

「量子誤り訂正符号」とは,量子コンピューターで失われた情報を回復する鍵とされるもの。加えて,今回の証明により陽子崩壊の示唆やモノポールの存在が予測された。しかし,陽子崩壊の崩壊時間を定義するまでには至っていない。

研究グループは,対称性に関してもどのように破られるかを定量的に示すには至っていないことから,今後さらに研究を進めていく予定とし,今回の研究成果は,素粒子の究極の統一理論の構築に大きく貢献し,近年注目される量子コンピューターの発展にも寄与するとしている。

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