大阪大学と京都大学らは,光触媒の性能を速く簡便に評価する手法を確立し,ビスマス系のオキシハライド光触媒の最適な焼結温度を導いた結果,光触媒能を従来の約3倍に向上させることに成功した(ニュースリリース)。
光触媒による高効率な水分解反応の過程には光触媒の電子物性に加え,結晶性や粒子の大きさ(粒径)と表面形状,助触媒の物性,焼結温度,組成比など多くの因子が複雑に影響する。これまで光触媒の研究は高効率化・最適化に注力してきており,光触媒の持つ本質的な性能と反応速度を決めている因子を速く簡便に評価することができれば,その開発と高効率化は飛躍的に進展する。
研究では,このような高速評価法の候補の1つとして,研究グループが開発した,簡便に光電気特性を評価できるマイクロ波分光法に着目した。この手法では,光触媒活性に大きな影響を及ぼす電荷ダイナミクスの情報を瞬時に得ることができる。しかし,これまでこのマイクロ波分光により得られるシグナルと光触媒活性の関係はよく分かっていなかった。
今回,近年注目されているビスマス系の層状オキシハライド(酸ハロゲン化物)を各焼結温度で合成し,得られたサンプルのマイクロ波信号と光触媒活性を比較した。これにより,両者の相関関係を明らかにするとともに,この系において光触媒活性を左右する因子を突き止めることを目標とした。
マイクロ波分光測定によって求めた条件である,600度で焼結したオキシハライド光触媒の性能を評価したところ,酸素発生速度は従来の3倍に向上した。この酸素発生反応の量子収率(400nmの光照射)は3%であり,固相反応で合成したオキシハライド光触媒の中では世界最高値を実現した。
この成果から,マイクロ波分光で得られる信号の強度と寿命の積を指標とすることで,さまざまな半導体材料の光触媒能を瞬時にスクリーニングできる可能性が示された。特に,研究で注目した層状オキシハライドは近年新たに開拓された材料群であり,各層の積層パターンや元素置換によって無限の組み合わせが考えられ,すでに多数のオキシハライドが報告されているという。
研究グループは今回確立した手法を用いてオキシハライドの光触媒能を高速に予測・評価することで有望な材料に絞り込むと同時に,それら材料の合成条件までも高速に最適化することによって,高効率な水分解用光触媒の開発につながるとしている。