京都大学の研究グループは,in vitroでの骨形成過程を表す骨様結節を,レチノイン酸シグナルを用いることでヒトiPS細胞から10日間で誘導する方法を確立すると共に,共焦点顕微鏡を用いて,骨細胞様細胞が結節表面から内部へ移動する過程の可視化に成功した(ニュースリリース)。
正常な骨改変過程及びその病的状態を理解する上で,疾患解析から創薬への応用を考えると,in vitroでの骨改変過程モデルの構築は重要なアプローチとなる。
研究グループは骨改変過程の中の骨形成過程に焦点を絞り,ヒトiPS細胞を用いて,in vitroでの再現系の構築を試みた。これまでに進行性骨化性線維異形成症(FOP)患者由来iPS細胞の骨様結節の形成が亢進していることを報告したが,正常細胞からの誘導では安定した結果が得られていなかった。
今回の研究では,従来の骨様結節誘導法にレチノイン酸シグナルを加えると,4日目より石灰化結節が認められ,10日目までその数は増加した。遺伝子発現を解析したところ,iPS細胞から誘導した骨様結節内には骨芽細胞及び骨細胞の特徴を有した細胞が含まれることがわかった。
次に,共焦点レーザー顕微鏡を用いたイメージングにより,誘導した骨様結節の詳細の解析に成功した。また,その過程を時空間的に理解するために,タイムラプスイメージングを用いて観察を行なった結果,iPS細胞から誘導された骨芽細胞が骨細胞様細胞に変化することが観察できた。
さらに,骨芽細胞段階である分化誘導7日目の細胞塊を免疫不全マウスの頭蓋骨欠損部へ移植することで,誘導細胞のin vivoでの骨形成能を評価したところ,誘導細胞はin vivoにおいて骨形成能を有することがわかった。
この誘導法を用いて,遺伝性骨疾患である骨形成不全症(OI)の病態再現を行なった結果,OI iPSにおいて,標準iPS細胞及び変異修復iPS細胞と比較して,石灰化結節形成能の低下,コラーゲンの細胞外分布異常及び細胞内の蓄積を認めた。また,mTORiの添加により,これらは部分的な改善を認めた。
研究グループは,これらより既報のOIの病態である石灰化能の低下・コラーゲンの分布異常という,in vitroにおける病態再現が確認できたとする。また,有効性が示唆されているmTORiにおける部分的な改善も認めることから,この誘導系を用いて,候補薬剤の効果を確認することも期待できるとしている。