広島大学は,米スローンケタリング記念がんセンターと共同で,生細胞内の特定内在遺伝子の転写と関連タンパク質の同時1分子イメージングに成功した(ニュースリリース)。
細胞内現象の動的詳細を分子レベルで記述するには大きな障壁が存在する。例えば,遺伝子発現の最初のステップである転写は,RNAポリメラーゼII(Pol II),転写制御因子(RF),およびクロマチン間の複雑な相互作用を含むが,それらの細胞内環境における分子動態を可視化することは依然として困難だった。
今回の研究では,特定分子の挙動を1分子レベルで定量可能な,誘導放出制御(STED)および能動的標的追跡システム等を利用した新奇イメージング技術を用いて,種々の分子が密集した細胞内環境下において単一内在遺伝子の可視化を実現した。これに加え,Pol IIを1分子レベルでイメージング,追跡,定量し,転写サイクル中の動力学を明らかにした。
さらに,研究グループは,複数の転写関連事象(RF-クロマチン相互作用,Pol II動力学,転写動態)を調べることにより,これまで従来法では解析不能だった遺伝子調節機構の詳細な操作パラメーターを明らかにしたとしている。