東北大学は,立体像のデスクトップ表示や拡張/仮想現実感技術に実用的な視域角30度のホログラフィ立体表示を実現するため,1μmピッチの超高解像度画素において,液晶分子の並びを面内で均一化することに成功した(ニュースリリース)。
究極の立体表示技術として待望されている電子ホログラフィは,光源からの光に位相変調を行なうことで光波面を直接的に制御して,光を干渉・回折させることで3次元の光像を形成する。これにより,奥行きを含めて物体からの光が忠実に再現されて,眼球内に届けられる。
高解像度化に有利な液晶ディスプレーは,プロジェクター用途では3μmピッチ程度の画素まで開発されているが,実用的な電子ホログラフィを実現するためには,デスクトップ作業環境において両目で立体像を視認できるようにするとともに,物体を明瞭に知覚できる視覚の有効視野をカバーする視域角30度を確保する必要がある。
30度の回折光(視域角)を得るためには,1μmピッチに画素を微小化するとともに,十分な光位相の変化幅(360度)を確保できる厚い液晶層を構成しなければならない(現
状のプロジェクタ用素子では180度の位相変調しか得られない)が,そうした場合,隣接画素からの漏れ電界や液晶分子配列の連続性により画素の駆動が困難だった。
そこで研究グループは,画素間に樹脂の隔壁を,型押し加工(光ナノインプリント法)により高精度に形成して独立駆動を可能にするとともに,微小な間仕切りを挿入して液晶領域を長方形にすることで,乱れやすい画素内の液晶配列を長軸方向に制御することに成功した。液晶の均一な初期配列が実現されたことで,これまで困難とされてきた超高解像度の画素駆動が可能になるという。
これにより,自然で疲労が生じない理想的な空間像再生が可能となる。研究グループは,今回の技術は,デスクトップでの立体画像表示(裸眼)や拡張/仮想現実感技術にも役立ち,5Gを含め通信・放送による高臨場感映像サービス,医療診断の支援,建築物・工業製品の設計,車載用のヘッドアップディスプレーなど幅広い分野への応用が期待できるとしている。