名古屋大学は,仏エクス-マルセイユ大学と共同で,ナノマテリアルの新素材として注目される,鉛からなるハチの巣状構造の単原子層物質「プランベン」の創製に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
単原子層材料としてよく知られているグラフェンは,電気伝導性が高く,また,曲げなどに対して頑丈といった特長があるが,電気伝導性の制御が難しかった。
そこで,電気伝導性の制御をよくするためにグラフェンの結晶構造を維持したまま,グラフェンを構成している炭素元素を周期律表で同族元素であるシリコン,ゲルマニウム,スズ,鉛に置き換えた物質を創製する研究が注目されている。
プランベン以外のポストグラフェン物質は,シリセン,ゲルマネン,スタネンがあるが,それぞれ2012年,2014年,2015年に実験的に創製することに成功し,国内外で次々と研究成果が報告されている。一方で,周期律表において同族で最も重い元素である鉛元素で作るプランベンの創製方法を発見することは,至高の目標(Holy Grail)とされ,世界中でポストグラフェン物質の開発研究が行なわれてきた。
今回の実験では,パラジウム結晶表面に鉛を蒸着後,500°Cで真空加熱しパラジウム鉛合金薄膜を作製。その後,試料を冷ますと,合金薄膜表面に「プランベン」ができることを見出した。
研究グループは,パラジウム鉛合金薄膜を作製するにあたり,「ナノスケールのバブル構造」を偶然発見した。表面科学の約50年間の歴史において,初めて発見された大変ユニークな結晶構造であるという。北京オリンピックの競泳施設「ウォーターキューブ」に外見がそっくりなナノ物質であることから,これを「ナノウォーターキューブ」と命名した。
炭素と同族のハチの巣状の二次元物質は,原子番号が大きいほど電子構造においてエネルギーギャップが大きくなると理論的に予測されている。周期律表において同族で最も重い元素である鉛元素で作るプランベンの創製方法を発見することは,至高の目標(Holy Grail)とされ,世界中でポストグラフェン物質の開発研究が行なわれてきた。
研究グループは,今回発見したナノテク新素材のプランベンは,未来型エレクトロニクスといわれているスピントロニクスやIoT社会実現のためのナノエレクトロニクスの開発につながるとしている。