長崎大学とキヤノンメディカルシステムズは,日本医療研究開発機構(AMED)の「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」において,常温での保存や輸送が可能な蛍光LAMP用常温保存試薬を開発した(ニュースリリース)。
研究グループは,2015年に判定時間が約11.2分と従来システムに比べて1/6程度に短縮できる「エボラ出血熱迅速検査システム」を実用化したが,試薬の運搬は冷凍で行なうことから,常温での輸送・保管ができる試薬が求められてきた。
そこで研究グループは,エボラ出血熱ウイルス専用の常温保存試薬(専用プライマー,逆転写酵素などの試薬を全て含んでおり,検体から抽出された核酸を添加するだけで検査を実現するもの。25℃で保存可能)の製造法の開発,品質の検証を進め,2019年3月に3ヶ月保存の検証が終了した。
2018年9月には,コンゴ民主共和国において,この試薬の試作品でエボラウイルス実検体を用いたテストを行ない,期待する成果が得られたという。
研究グループは,世界でアウトブレイクが発生した際,この試薬は活用可能だとし,今回の成果により今後海外の感染症対策支援などに役立つほか,実用に際しての大きな課題であった冷凍輸送問題が解決するとしている。
また,これらに加え,使用現場でプライマー等を添加し検査に使用する汎用プラットフォーム試薬(ユーザーが検体,プライマー,逆転写酵素などを添加して使用する常温試薬)を開発し,3ヶ月保存の検証が終了した。
今後,研究グループは,逆転写酵素を含むRNA用汎用プラットフォーム試薬の開発・検証を行ない,長崎大学やブラジルのFederal University of Pernambuco Laboratory of Immunopathology Keizo Asami (UFPE/LIKA)などの研究機関にサンプル品の提供,評価を進め,年度内の上市を目指すとしている。