岐阜大,CO2ガスで自己修復するポリマーを開発

岐阜大学は,CO2(二酸化炭素)ガスですばやく自己修復する,世界初の気体可塑性シリコーンエラストマー(イオン架橋ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマー)を開発した(ニュースリリース)。

エラストマーは,ポリマー分子を架橋(橋架け)して得られるポリマー材料で,ゴム弾性を示す。ひとの肌のように柔軟で弾力があるエラストマーは,乗り物のタイヤや輪ゴムをはじめとして日用品から医療品まで,広く利用されている。

従来の自己修復性材料の多くでは,自己修復のトリガーとして熱や光(主に紫外光)が用いられてきた。しかし,製品に組み込まれた材料の自己修復を行なう場合,加熱することで製品の機能に悪影響を及ぼすことが懸念されたり,製品の内部に光を照射することが困難な場合がある。

研究グループは,イオン成分どうしが凝集する性質を利用してポリマーを適度に弱く架橋し,エラストマーに自己修復性能を付与することに成功していた。今回はこれを発展させ,気体(CO2)により急速に可塑性を高め,すばやく自己修復する材料を開発した。

今回開発したPDMS-xNaは,ポリジメチルシロキサン(PDMS)に少量のカルボキシ基(COOH)を導入し,その一部を水酸化ナトリウムで中和して合成される。ここで,未中和および中和されたカルボキシ基はたがいに集まってイオン性の凝集体を形成し,これがポリマーを架橋するために無色透明なエラストマーが得られる。

このイオン凝集体による架橋は適度に弱く,そのために空気中でも,室温でゆっくりとポリマーの熱運動に由来する架橋構造の組み替えがおこる。この架橋構造の組み替えのためにPDMS-xNaは自己修復する。

一方で,PDMS-xNaがCO2ガスにさらされると,CO2がイオン凝集体に溶け込むことで,イオン凝集体によるポリマーの架橋が弱くなり,架橋構造の組み替えが加速される。

それにともなって可塑性が顕著になり,すなわち,材料が軟化するために,CO2ガス中では空気中と比べて急速に自己修復が進行する。CO2中の方が空気中よりも10倍程度早く自己修復し,さらに,PDMS-xNaは,マイナス20℃の寒冷環境でもCO2ガスによって自己修復可能という。

研究グループは,今回開発したPDMS-xNaは,幅広い製品に応用できる可能性があり,例えば,体に密着するウェアラブル端末やセンサー,人工皮膚,異種の材料をつなぎ合わせる接着剤などへの応用の可能性が考えられるとしている。

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