佐賀大学は,ノベルクリスタルテクノロジー,タムラ製作所と共同で,β型酸化ガリウムエピタキシャル膜の高品質化技術を開発した(ニュースリリース)。
酸化ガリウムは,現在パワーデバイス用材料として開発が進められている炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)と比べ,4.5eVとより大きなバンドギャップエネルギーを有するため,より低損失なパワーデバイスを実現できる新材料。また,酸化ガリウムはSiCやGaNと異なり,融液成長法による結晶育成が可能であり,高品質で大型の単結晶をSiCやGaNの100倍高速に成長することができるため低コスト化も期待できる。
酸化ガリウムパワーデバイスを家電や自動車,産業機器などへ広く普及させるためには,10Aから数100A程度の電流を流すことができる大型素子を実現する必要がある。しかし,これまで酸化ガリウム膜の結晶品質に課題があり,素子サイズを大きくするとリーク電流が急激に増加してしまうため,1A程度の電流を流せる小型の素子しか作ることができなかった。
今回,研究グループは,ハライド気相成長法を応用した独自の酸化ガリウム膜形成技術およびその評価手法を開発し,酸化ガリウム膜中の結晶欠陥を従来品の1/100に低減する事に成功した。これにより,酸化ガリウムパワーデバイスのリーク電流が大幅に減少し,大型素子の製造が可能になった。
今回試作したSBDは,従来品よりもリーク電流が1万分の1に減少していた。また大電流動作実証のために試作した,2.3mm角酸化ガリウムSBDの電流-電圧特性では,十分に低い逆方向リーク電流を維持したまま,従来に比べ電流値が20倍の20Aでの動作を確認したという。
すでに研究グループは,トレンチ構造を導入したSBDを開発し,順方向電圧がSiCよりも40%程度低い低損失ダイオードの実証に成功している。今後は,今回開発した技術をトレンチ型SBDへ適用し,10A級の低順方向損失酸化ガリウムSBD開発を進めていく。このデバイスが実現されれば,家電,自動車,産業機器などの様々な電気機器の省エネルギー化に貢献できるという。
なお,研究グループは,新開発した酸化ガリウム膜付き基板を近日中に販売開始する計画としている。