理化学研究所(理研)らの国際共同研究グループは,半導体量子ドットデバイスにおいて,電子スピン量子ビットの量子非破壊測定に成功した(ニュースリリース)。
汎用量子コンピュータの実現には,量子ビットの高精度な制御と読み出しを用いて,量子エラー訂正回路を実装することが必要不可欠と考えられている。しかし,従来の電子スピン量子ビット読み出し手法では,エラー率を十分に低減することが原理的に困難だった。また,量子エラー訂正に必要とされる量子非破壊性は,これまでに実証されていなかった。
今回,研究グループは,GaAs/AlGaAs(砒化ガリウム/砒化アルミニウムガリウム)ヘテロ接合基板に微細加工を施すことで,「三重量子ドット構造」を作製した。研究グループは,この試料が単一の電子からなる電子スピン量子ビットと二つの電子からなるST量子ビットのハイブリッド量子デバイスとして利用できることを2018年に実証している。
今回の研究では,高速かつ高精度な測定に適したST量子ビットを補助量子ビットとして利用することで,電子スピン量子ビットの量子非破壊測定を試み,電子スピン量子ビットの量子非破壊測定に成功した。
さらに,非破壊性を応用して測定を繰り返すことで,読み出しエラー率を指数関数的に低減でき,測定精度が63%から89%まで向上する(エラー率が37%から11%に減少する)ことを実証した。
研究で実証した電子スピン量子ビットの量子非破壊測定は,半導体量子コンピュータの実現に不可欠な量子エラー訂正回路の実装に向けた成果。今回の研究成果をシリコン量子ドットに適用すれば,最大で99.96%の測定精度が期待できるとし,半導体量子コンピューターの必須要素である「量子ビットの低エラー読み出し」と「量子エラー訂正」の実現に道筋を示したとしている。