明電舎は,2014年から基礎研究・製品開発を行なっている「カーボンナノ系冷陰極X線管」(管電圧120kV,管電流1mA)の製品化に成功し,2019年10月より販売開始する(ニュースリリース)。
カーボンナノ系冷陰極X線管は,陰極にカーボンナノ系電子源を使用したX線管。これまで製造工程が難しく製品化にいたっていなかった。同社は,半導体製造装置用真空コンデンサーの開発・製造を行なっており,そこで得た真空技術(真空コンデンサの可変機構と真空炉中真空封止方式)の応用(同社特許技術)により,今回製品化に成功した。
この電子源は,カーボンナノ構造の先端から電界電子放出により電子を放出する方式で,従来の熱陰極X線管(タングステンフィラメントを加熱して熱電子放出により電子を放出する方式)に比べ,フィラメントの加熱が不要なため,小型・軽量・省電力を可能とする。
この電界電子放出方式により,X線が必要な時に,瞬時に照射できるため,装置のX線量の低線量化やX線管の長寿命化が可能。また,X線管の大きさが熱陰極X線管に比べ,半分以下になるという。
今までのX線検査装置は大きく,重量があるため,限られた用途のみでしか使用できていなかったが,小型化によりプラント配管検査などインフラ分野への用途拡大が見込まれ,さらに駅やイベント会場等での手荷物検査等への適用も期待できる。
同社は,この製品の投入により,新たに非破壊検査市場に参入する。この製品は,産業技術総合研究所及びライフ技術研究所の技術を使用し,同社はこの製品の製造・販売に関し両社と特許実施許諾契約を締結している。