島津製作所は,血管撮影システムによって得たX線画像と液体クロマトグラフ質量分析計システム(LC-MS)による分析結果を融合記録し,効率的かつ迅速な血液分析を実現する研究用途向けの「AVS支援システム」を4月9日に発売した(ニュースリリース)。価格は6000万円~(税別,血管撮影システムは含まず)。
近年,血管撮影システムやカテーテル技術の進歩によって,局所的に体内の血液を採取可能になった。また,質量分析装置の性能が向上し,生体試料に含まれる成分を素早く高感度に検出できるようになった。
東北大学では,これらの手法を組み合わせ,副腎の複数箇所から血液をカテーテルで採取し,LC-MSによって成分を分析することで,アルドステロンというホルモンの分泌量を部位ごとに随時測定している。こうして得たデータと,高血圧の原因のひとつとされる原発性アルドステロン症の関連性を研究している。今回,この東北大学の取り組みと同社の方向性と一致したという。
AVSは,Adrenal Venous Sampling(副腎静脈サンプリング)の略。このシステムは,X線画像と分析結果を融合して記録するソフトウェア「Sampling Viewer(サンプリングビューワー)」,液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8050」システムおよび制御用ワークステーション,LC-MS用ソフトウェア「AVSsolution(エーブイエスソリューション)」から構成された,東北大学と共同開発したもの。
血管撮影システムで体内を透視しながらカテーテルで副腎から採血し,その位置を「Sampling Viewer」でX線画像上に記録する。その後,「LCMS-8050」システムで採取した血液中の成分を分析し,「AVSsolution」でデータを処理することで,採血部位ごとのX線画像と質量分析装置による分析結果を紐づけて登録できるようになる。
さらに,このシステムを用いることで,血液の採取から分析結果を得るまでの一連の作業を同一の医療機関内で随時実施できるとしている。