名古屋大学の研究グループは,測定した血糖値データのみによって,30分後の血糖値を予測する人工知能を用いたシステムを新たに開発した(ニュースリリース)。
昨今,糖尿病治療や予防においては,患者自身が血糖値を持続的に把握し,インスリンの投与によって制御することが重要となっている。血糖値制御のためには血糖値の予測が必要だが,既存製品は糖分やインスリンの摂取量を計測した血糖値データと組み合わせて予測を行なっていた。一方,利便性向上のため,測定した血糖値データのみを用いた血糖値予測も注目を浴びている。
今回,研究グループは事前に低血糖を感知し,糖分の摂取などによって血糖値の回復を促すため,人工知能技術の一種である機械学習を用い,測定した血糖値データのみによって,30分後の血糖値を予測するシステムの開発に成功した。予測には時系列予測に特化したニューラルネットワークを用い,システムの稼働中に学習と予測を交互に行なう。
これまで,糖尿病患者の血糖値制御を支援する既存製品は,インスリンや糖分の摂取量を定期的に手動入力し,これらを計測した血糖値データと組み合わせて血糖値の予測を行なっていた。このような手動入力を排除したという点から,今回開発したシステムは利便性の面で向上しているという。
また,このシステムは将来的な目標として涙液から発電・血糖値のセンシングを行なうコンタクトレンズへの搭載を想定しているが,これを達成すると,針を刺すことなく血糖値の測定と予測を行なうことのできる一体的なシステムを実現することができる。研究グループは,今後,システムの低消費電力化を進め,完成度を高めていくとしている。