理化学研究所(理研)と東北大学の研究グループは,眼底検査装置からのマルチモダリティ画像情報を用いて,緑内障を自動診断できる機械学習モデルを構築した(ニュースリリース)。
緑内障は,日本では中途失明原因の第1位となっており,眼科検診により早期発見し,その進行を止める早期治療を行なうことが求められている。従来の緑内障の診断は,カラー眼底画像や眼底の2次元断面を測定する光干渉断層計(OCT)画像で,視神経乳頭と黄斑の形状に対する読影を行なうことにより主観的に判断されていたことから,客観性がなかった。
機械学習による眼科疾患検出においては,世界的に進展があるが,緑内障を対象とするマルチモダリティ画像情報を大量に収集することは難しく,緑内障の詳しい診断はできなかった。
そこで研究グループは,眼底検査装置で視神経乳頭と黄斑を撮影したデータから抽出したマルチモダリティ画像情報に対して,緑内障の自動診断を行なう機械学習モデルの構築を試みた。
研究グループはまず,確定診断付きの緑内障208眼と健常149眼の合計357眼を対象とし,それぞれから視神経乳頭部のカラー眼底写真(RGB 画像中のグリーン成分のみ),3次元OCTデータから得られる視神経乳頭神経線維層の層厚マップとデビエーションマップ(層厚マップの平均画像との差分画像),同じく3次元OCTデータから得られる黄斑の神経節細胞複合体層の層厚マップとデビエーションマップの5種類を抽出した。
次に,公開された訓練済みの畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルの一種を用いて,この5種類の画像データセットでそれぞれのCNNモデルを構築し(転移学習),緑内障の自動診断を行なう機械学習モデルを構築した。この機械学習モデルの性能を調べた結果,高い診断精度(AUC=0.963)を得ることができたという。
研究グループはこの成果が,緑内障の早期発見につながるとしている。