東大,シナプス表面を光学的にナノスケールで解析

東京大学は,超解像顕微鏡の手法の1つである構造化照明法を用いて,神経細胞のつなぎ目であるシナプスの形態,特に樹状突起スパイン(スパイン)と呼ばれる構造の表面形状をナノスケールで解析する技術を開発した(ニュースリリース)。

スパインは記憶・学習の基盤とされているシナプス可塑性によってその形態が変化する。そのためスパインの形状を,技術的に困難な電子顕微鏡を使わずに,光学顕微鏡で効率よく解析する技術が求められている。しかし,これまでは光学顕微鏡の解像度が低いためにこのような解析はできなかった。

今回,研究グループは,電子顕微鏡に頼らず,急速に発展してきた超解像顕微鏡の技術を活用して,光学顕微鏡によるデータからシナプスの形をナノスケールで正確に測定するための技術を開発した。

具体的には,超解像顕微鏡の1つの手法である構造化照明法を用いて培養海馬神経細胞が形成するシナプス構造,特に樹状突起スパイン(スパイン)と呼ばれる数μm程度のサイズの「とげ」の様な構造の画像を取得した。得られた画像からスパインの表面を決定し,表面形状をメッシュと呼ばれる立体形状のモデルとして表現した。

この手法でスパイン形状をまず取得し,同じ細胞を電子顕微鏡で観察することにより,得られた立体形状の信頼性を確認したところ,電子顕微鏡で検出できたスパインの微細な凹凸が光学顕微鏡のデータからも再現できることがわかった。このようにして得られたスパインの立体形状から形に関する多数のパラメーターを測定して,データサイエンスの手法や機械学習の手法を用いてスパインを自動分類し,さらに時間経過に伴う形態変化の特徴などを解析した。

この手法を用いることで数千個のスパインの形状データを短時間で自動的に解析することが可能となり,実際に遺伝子改変動物のスパインの形態変化を感度よく検出することに成功した。また,今回開発した手法は主に培養細胞での形態解析に利用したが,それ以外に脳の切片などのより生体に近い標本での解析にも利用可能なこともわかったという。

今回の技術開発により,構造化照明法を用いて電子顕微鏡で得たデータとほぼ同等のスパイン形状データを1000個以上のスパインから取得し,数理科学的な手法を用いて自動的に解析することが可能となった。研究グループは,精神疾患などの脳の疾患では,スパインの数や形に変化が生じる例も報告されているため,今回開発された技術の応用が,精神疾患の薬物スクリーニングの手法としても期待できるとしている。

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