名工大,細胞の収縮力を光で評価

名古屋工業大学は,細胞が発生する収縮力を光で評価する方法を開発した(ニュースリリース)。

細胞の健康を示す指標になると考えられる細胞の収縮力を測定する代表的な方法に,かたさが既知の柔らかい基板上に細胞を播種し,基板の変形量から力を計測する「牽引力顕微鏡法」がある。しかし,この手法では基板の変形量を計測するために,基板が十分に柔らかい必要があり,生体内環境では計測が困難だった。

また,基板の変形量から力を計測するため,細胞が隣同士接着した状態では互いに逆方向に基板を引っ張り合い,力の計測が困難だった。さらに,ビーズをゲルに埋めるなど煩雑な手法が必要だった。

透明な物体内の力の状態を測る光弾性法では,複屈折物質から出射した2偏光間の位相差(リタデーション)で力の大きさを評価することができる。今回の研究では,この光弾性法を細胞に適用し,細胞の収縮力がリタデーションで評価できるかを検討した。

まず,収縮薬・弛緩薬を投与すると,リタデーションがそれぞれ増加・減少した。次に,従来法の収縮力計測法である牽引力顕微鏡法と本法のリタデーション計測を同一細胞で実施したところ,両者には有意な相関があり,個々の細胞の収縮力の大小傾向が従来法と本法で同じとなった。これにより,細胞収縮力の増減を評価できたことを示した。

また,血圧を変化させる働きがある血管平滑筋細胞の評価が可能かを調べるた結果,細胞がタンパク質の発現の種類や量を変えて性質や機能を変える,性質細胞の表現型を簡単に評価できる手法になる可能性も示した。

この収縮力評価法では,ガラス面に培養した細胞の収縮力を容易に評価できることから,血管平滑筋細胞の収縮力の変化を容易にとらえることができる。血管平滑筋細胞は,動脈硬化や高血圧,大動脈瘤部位で表現型が”合成型”であり,正常血管では”収縮型”であるとの報告から,細胞への薬効を調べるような創薬開発用ツールなどに応用されることが期待される。

また,近年では外力が生体に作用し,細胞がその外力により応答を変化させることが知られており,そのメカニズムが解明されるようになってきている。研究グループは,そのような解明のためにも有用な手法になるとしている。

キーワード:

関連記事

  • CYBOなど、世界初の臨床グレード自律型デジタル細胞診システムを開発

    CYBOとがん研究会は、子宮頸がん検診などで広く用いられる細胞診の分野で、世界初となる「ホールスライド・エッジ・トモグラフィー」および細胞検査士や専門医の検査技術を学ばせたAI解析ソフトを搭載した臨床グレード自律型デジタ…

    2026.02.24
  • 高知大ら,生体に適用可能な細胞膜プローブを開発

    高知大学と愛媛大学は,新しい蛍光性細胞膜プローブ「dSQ12AQ」を開発した(ニュースリリース)。 細胞の形や動きを観察することは,がんの転移や免疫応答,幹細胞の分化などの理解に重要。そのために使われる蛍光イメージングで…

    2025.08.28
  • 熊本大,深層学習で細胞顕微鏡観察のジレンマを克服

    熊本大学の研究グループは,深層学習による顕微鏡画像の画質復元技術を活用して,植物細胞の分裂における初期の細胞板形成過程を可視化し,アクチン繊維の新たな局在パターンを明らかにした(ニュースリリース)。 細胞内の繊細な構造を…

    2025.05.20
  • 工繊大ら,カーボン量子ドットで細胞内部温度を測定

    京都工芸繊維大学,大阪大学,東京大学,広島大学は,ナノサイズのカーボン量子ドット(CQD)を用いて,細胞内部の温度を高精度に測定する技術を開発した(ニュースリリース)。 細胞内の温度は生命現象に深く関わっており,これまで…

    2025.03.27
  • 東京科学大ら,細胞の局所環境の温度計測法を開発

    東京科学大ら,細胞の局所環境の温度計測法を開発

    東京科学大学と九州大学は,極性応答により過去に例のない大きな発光波長変化を示すソルバトクロミック蛍光色素を設計し,温度変化による微小な極性環境の差を蛍光で読み取り,高い精度で温度測定が可能な新概念の分子温度計を開発した(…

    2025.03.27

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア