名古屋大学,信州大学,タイ カセサート大学は共同で,窒素陽イオンを導入した高結晶性p型半導体グラフェンの開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
グラフェン材料は,次世代の電子材料として期待されている。しかし,材料機能を制御するためには,一部の炭素を炭素とは異なる元素に置き換えるドーピングが必要となる。
シリコン半導体分野では,このドーピング技術により様々な半導体デバイスが生み出されているが,グラフェンへのドーピングでは,異種元素の導入にともない,そのグラフェンの特性の起源とも言うべき平面性が失われるという問題点があったため,カーボンデバイス開発に向けた大きな障壁となっていた。
研究グループでは,名古屋大学発の合成技術,ソリューションプラズマにより,陽イオン性窒素の導入を実現し,その結果,その平面性を維持することを可能にした。
窒素の含有率は重量比で16.5%。15%以上の窒素を含み,かつ,高い結晶性・平面性を有するグラフェンとしては,世界で唯一の材料と言える。この半導体特性を調べた結果,p型半導体特性を示すことが分かった。
通常,窒素をドープした場合は,n型半導体特性を示すことが一般的だが,今回,陽イオン性窒素を導入したことにより,正孔(ホール)をキャリアとして機能させることに成功した。
研究グループは,異種元素を導入したグラフェンの半導体特性の制御により,カーボン材料のみでできた軽量でフレキシブルな太陽電池等のデバイスやディスプレー等へ利用する透明導電性電極,燃料電池で不可欠な白金触媒の代替など高価な金属を使用しない触媒等への応用が期待されるとしている。