NIFSら,中性子星合体の光分析用データを最高精度で算出

自然科学研究機構核融合科学研究所(NIFS),リトアニアのビリニュス大学,東北大学は,宇宙の彼方で起こった中性子星同士の衝突と大爆発に由来する光の分析を可能とするデータを,世界最高の精度で求めることに成功した(ニュースリリース)。

物質を構成する元素は,光を吸収するという性質を持っている。元素が吸収する光の波長やその吸収の度合い等はそれぞれの元素に固有で,それらを原子過程データと呼ぶ。この原子過程データ等を用いて,キロノバ(中性子星やブラックホールなど,高密度な天体同士が衝突・融合したときに発生する大規模な爆発現象)について,どの波長の光がどの程度弱くなっているかを解析することで,中性子星合体で生成された重元素の種類と量を推定できる。

今回,研究グループは,キロノバの光吸収に最も大きな影響を与えるネオジムに注目した。キロノバ解析に重要なのは,重元素から数個の電子が剥がれたイオンが吸収する多くの波長の光に関する原子過程データとなる。これらのうちごく一部は,実験によって評価され,世界基準として米国立標準技術研究所(NIST)のデータベースに収録されている。

しかし,収録されているデータは限られているため,計算を用いて原子過程データを求めることが行なわれている。その計算は多くの波長に適用できるとともに,NISTのデータを高精度で再現できるものでなければならない。

研究グループは,電子の配置をどのように組み合わせれば現実的な時間で高精度な計算ができるのかについて試行錯誤を重ね,その結果,最適な電子の配置の組み合わせを見つけ出すことに成功した。それにより,原子過程データを比較的短期間で求められる計算コードができた。

この計算コードを用い,大規模計算を実施した結果,ネオジムが吸収する約300万通りの波長の光に関する原子過程データを求めることができた。このデータと,NISTの世界基準のデータとを比較してみると,誤差が10%程度と,これまで研究グループが用いていた電子配置の組み合わせによる計算結果の精度を大幅に更新する,世界最高精度を達成することができた。

研究グループは,この最高精度のデータと,以前の精度の低いデータとを両方用い,国立天文台の計算機でキロノバの光のシミュレーションを行ない,精度の違いが光の明るさに及ぼす影響を世界で初めて定量的に評価し,明るさの違いが20%ぐらいであることを明らかにした。これは,最大で100%程度の不確かさがあるといわれている,重元素合成のシミュレーションに比べても十分に低い値としている。

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