物質・材料研究機構(NIMS)は,太陽光発電と蓄電池を組み合わせたマイクログリッドシステムを実際に運用したビッグデータをデータ論文として公表した(ニュースリリース)。
マイクログリッドは,再生可能エネルギーの主力電源化を実現するための中核技術の一つ。2018年9月に発生した北海道胆振東部地震に起因する大規模ブラックアウトでは,蓄電池と組み合わせた風力発電から電力供給が再開されるなど,再生可能エネルギーを組み込んだマイクログリッドシステムが,激甚災害など非常時の分散エネルギー拠点としても有用となる。一方,マイクログリッドの本格的な運用には,時々刻々と変化する需要と出力に対応する高度なエネルギーマネジメントシステムが求められる。
その設計には,実際の運用に基づいたデータを解析することが重要だが,これまで公開された実データは,海外での住宅およびオフィスビルにおけるエネルギー需要のみで,建物内の需要データに加えて再生可能エネルギーの発電特性や蓄電池の運用特性などを含むマイクログリッドの運用データが公表された例は国内外ともになかった。
今回,研究グループは,太陽光発電および蓄電池を組み合わせたマイクログリッドを実際に運用して得られた発電量等のデータを3年以上にわたり収集し,データのクレンジングを行なったうえで,クラウド型データ公開システムである「figshare」および物質・材料研究機構のデータレポジトリ「imeji」上に公表した。
公表したビッグデータは,太陽光の発電量や蓄電池の充放電量,電力会社からの買電量などを1秒ごとに記録したデータであり,マイクログリッドシステムの運用に関連する12種類のパラメータの104,544,000秒にわたるデータとなる。
太陽光など出力が変動する再生可能エネルギーを系統電力網へ供給する際の,出力変化速度を定格出力の1%/分以内に収めるという要件を検討するためには,3秒より短い時間間隔で記録されたデータが必要。今回公開した毎秒記録かつ季節変動や年ごとの変動を含む長期間のデータは,このような周波数変動対策技術の運用を設計するための基盤データとして活用が期待できるという。
研究グループは,今後,データの分析を進めるとともに,マイクログリッドシステムの高度な運用方法や最適なシステム構成を提案し,データ駆動によりマイクログリッドシステムの普及を加速する取り組みを進めていくとしている。