広島大ら,300GHz帯ワンチップトランシーバを開発

広島大学,情報通信研究機構(NICT),パナソニックは共同で,シリコンCMOS集積回路により300GHz帯を用いて80Gb/sのデータ伝送を可能にするワンチップトランシーバの開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

テラヘルツ帯は,新たな周波数資源として高速無線通信への利用が期待されている。2017年には無線通信規格IEEE Std 802.15.3dにより252GHzから325GHzの周波数帯域のチャネル割当が示された。研究グループは,この中のチャネル66の周波数帯を用いて80Gb/sの通信速度を実現するワンチップトランシーバを開発した。

これまでのトランシーバーは送信と受信が別々のシリコンチップになっていたが,研究グループは今回,両機能を1つのシリコンチップに統合し「ワンチップトランシーバ(送受信)」を実現した。これにより,電子機器に搭載する際の部品数の削減とシリコンチップ面積の削減によってコストダウンが可能となり,より実用化に有利となる。

また,これまで受信回路の性能制限により通信速度は32Gb/sに留まっていたが,受信回路の性能を向上させるとともに,送信回路にも改良を加え,トランシーバとして大幅なデータ伝送速度の向上を達成した。

これらにより,スマートフォンなどで広く用いられている無線トランシーバと同様にシリコンCMOS集積回路で300GHz帯を用いた超高速データ通信が可能となり,2020年から始まる第5世代モバイル通信の次の世代(ビヨンド5Gモバイル)の無線トランシーバに利用できる可能性が高くなったとする。

今回の研究成果により,量産性に優れたシリコンCMOS集積回路による300GHz帯を用いることにより,情報通信ネットワークなどのインフラに使用される光ファイバに匹敵する毎秒テラビットの通信能力を一般ユーザが利用可能なほど安価に実現できる可能性があることが示された。これにより,300GHz帯無線の応用展開が考えられるという。

さらに将来的には,300GHz帯を含むテラヘルツ帯の無線通信は,地上と人工衛星間の超高速無線通信に適用されることも期待されている。地上の医師や医療AIとリアルタイムに通信を行ないながらスペースプレーン内で無重力状態で手術を行なうなど,現在の技術だけでは考えられないようなことが実現できる可能性があるとしている。

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