沖縄科学技術大学院大学(OIST)は,最適化された安定性と効率を備えた新しいペロブスカイト太陽電池(PSC)を作製した(ニュースリリース)。
PSCはその低コストと高い変換効率により,学術界と産業界の注目を集めている。ただしPSCの発電装置は依然として安定性が低く,ある程度の耐久性を持つようになるまでは商業的に製造することはできない。
PSCはそれぞれが特定の機能を持つ層状の材料で構成されている。ペロブスカイト材料から作られた「活性層」は光子を吸収する。光子が太陽電池に衝突すると,負に帯電した電子と正に帯電した正孔が活性層に生成される。研究グループは,2つの「輸送材料」の間に活性層を挟むことにより,電子と正孔の流れを制御した。
電子が正しい方向に流れるように,多くのPSCには「電子輸送層」が含まれている。ほとんどのPSCは,電子輸送層として二酸化チタンを使用しているが,太陽光に曝されるとペロブスカイトと反応し,結果として装置を劣化させてしまう。一方,二酸化スズは二酸化チタンの実現可能な代替材料として候補に挙がっていたが,これまで大規模な装置に組み込まれた成功実例はなかった。
今回研究グループは,スパッタリング蒸着によって二酸化スズの層側から効果的な電子輸送層を作製した。スパッタリング蒸着の強度と堆積速度を正確に制御することによって,一定の面積においても均一な厚さを有する滑らかな層を作製した。
その結果,作製した陽電池は20%以上のエネルギー変換効率を達成した。次に研究グループは,拡張性を実証するために,22.8cm2の実働面積を持つ5cm角のソーラーモジュールを作製し,12%以上の効率を達成した。また,実験において,二酸化チタンを使用したPSCよりも,3倍以上寿命が伸びることもわかったという。
研究グループは,今回の研究を通じ,最適化されたPSC設計を発電する窓ガラス,カーテン,リュックサックなど,展開可能な充電ユニットなどに応用することを目指すとしている。