東北大,イオン伝導を利用した蓄電デバイスを開発

東北大学は,10nm径の高密度ナノチャンネルにおける電解液のイオン伝導を利用することで,温度差から発電し,同時に蓄電する新しい原理のデバイス(熱電バッテリー)のプロトタイプを試作し,原理検証に成功した(ニュースリリース)。

モノのインターネット化が進んだスマート社会では,多種の膨大なセンサーへのエネルギーの供給が課題となっている。太陽電池では暗所でも温度差があれば使える発電として,半導体等の材料の熱起電力を利用した熱電発電が知られている。しかし既存の技術ではその小型化・高性能化には限界があると考えられている。また,発電素子に加えて従来は蓄電池の利用が不可欠だった。

今回,研究グループが開発した熱電バッテリーは,ナノメートルのサイズのナノチャンネル(貫通穴)における熱浸透流を利用して発電し,温度差がない状態ではこのナノチャンネルが電解液中のイオンにより閉じてしまうことを利用して蓄電する。

通常,ナノチャンネルの内部には,イオンが移動し電気二重層と呼ばれるイオンの層が形成されている。チャンネルの寸法が小さいと,この電気二重層により電気は流れない。しかし,温度差をその両端に加えるとこのイオンの層の厚さに分布が生じ,イオンの流れが生じ電流が流れて電荷が蓄積される。

試作した熱電バッテリーは,小型の電解液体容器を10nm径のナノチャンネルをもつ薄膜で2つに分割した構造を持ち,それぞれの電解液室には金属電極が形成されている。研究グループは,電解液を入れて温度変化を与えた実験で,既存の固体熱電素子と同等以上の発電性能が得られ,しかも発電したパワーを蓄電できることを確認した。

研究グループは,今回の研究により,太陽光発電が利用できない暗所においても温度差から発電し,必要な時にセンサーに給電させて動作させることが可能になるとし,将来はバッテリーを必要としないIoT機器の動作を可能にしたり,携帯端末の低消費電力化に利用されたりすることが期待できるとしている。

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