東京大学は,大阪大学と共同で,可視光のエネルギーを用いて,安価で入手容易な単純アルケンとアルデヒドを反応させ,ファインケミカルの合成に有用なキラルアルコールへと一工程で変換するハイブリッド触媒系を開発した(ニュースリリース)。
キラルアルコールは,医薬品や農薬などの重要な合成中間体として知られている。今までの方法でキラルアルコールを合成するためには,入手容易な原料から多段階の工程を経ることが多く,大量に廃棄物が副生することが避けられなかった。
今回,研究グループは,単純アルケンとアルデヒドを,不斉を制御しながら直接反応できるハイブリッド触媒系を開発した。このハイブリッド触媒系は,光触媒とクロム錯体触媒の二成分から構成され,通常活性化が難しいとされる単純アルケンのアリル位の炭素-水素結合を,室温,可視光照射という極めて温和な条件で切断し,アルケンをキラル有機金属種に変換する。
これがアルデヒドと反応することで,キラルアルコールが生成する。このハイブリッド触媒系の創製により,安価で入手容易な原料からわずか一工程で,廃棄物を最小限に抑え,しかも高度なキラリティ制御を伴って有用有機分子を合成できるようになったという。
研究グループは,今回の研究により,安価で豊富な炭素資源を高付加価値の有機分子へと効率的に変換する化学プロセスへの応用が期待できるとしている。