住友電気工業は,産業技術総合研究所(産総研)らとの共同研究で,炭化ケイ素(SiC)半導体を用いたV溝型スーパージャンクショントランジスタを開発し,SiCトランジスタの世界最小オン抵抗を達成した(ニュースリリース)。
同社はこれまでに,「V溝型金属-酸化膜-半導体構造トランジスタ(VMOSFET)」を開発しており,電子の流れをオンオフするチャネル部分に特殊な面方位(0-33-8)を利用することで欠陥の少ない酸化膜界面を形成し,低オン抵抗を実現している。
SiCトランジスタの実用上での課題とされている閾値電圧変動についても,酸化膜界面の低欠陥特性を反映することで,高安定性を確保した。現在は,産総研と共同で構築した6インチSiCパワー半導体デバイス量産試作ラインを活用し,VMOSFETの製品化も進めている。
VMOSFETは,電流を制御するデバイス上部のチャネル部に独自構造を適用することで,低オン抵抗化を図ったデバイスだが,今回は新たに,耐圧保持層(ドリフト層)にスーパージャンクション構造を適用した。スーパージャンクション構造はシリコントランジスタにおいて抵抗低減効果が実証され,実用化されているが,SiCへの適用については製法が課題となり,原理実証レベルで留まっていた。
今回,エピタキシャル成長とイオン注入を繰り返して狭ピッチの柱状構造を形成することで,従来の課題を克服し,SiCスーパージャンクション構造を実現した。低チャネル抵抗であるVMOSFET構造に整合する設計およびプロセスを適用することで,1,170V/0.63mΩcm2の低オン抵抗を達成したとしている。