大阪大学は,アルミナ(Al2O3)セラミックスと金属チタニウム(Ti)からなる複合材料の創製に成功し,割れにくさ(破壊靱性)を向上させると同時に,良好な電気伝導性を両立させることに成功した(ニュースリリース)。
さらにこの複合材料表面を化学的または熱的に処理することで,ナノ構造酸化チタン(チタニア)を形成させ,同時に光触媒特性を付与することにも成功した。
これまで,セラミックスと金属の複合材料は様々なものが研究・開発されているが,両者の結合様式の違いや,化学的反応性,さらには用いる原料粉末の性状が限られるなどの理由により,組み合わせや微細構造には制限があった。
特に構造用材料として知られるアルミナと,生体用材料などに応用されているチタンの組み合わせは,チタンの高い反応性(酸化や化合物の生成),粉末Tiの原料サイズが大きい(数10㎛)ための複合材料組織の不均一性などの問題があり,力学特性に優れ,微細なチタン金属が分散し,両者の性質が活かされた複合材料の作製は困難だった。
今回,研究グループは,脆い性質の水素化チタン(TiH2)粉末を微粉砕すると同時にアルミナ粉末と混合し,焼結反応中におけるTiH2の熱分解反応を利用しての金属Ti生成と同時にアルミナセラミックスを緻密化(焼結)させるプロセスを適用した。
この結果,TiとAl2O3との反応性を最小限に抑えると同時に,従来法で作製した複合材料に比較して著しく細かく均一なTiがAl2O3中に分散し,添加量制御によりこれらがパーコレーション(連続相形成)した緻密な複合材料の作製を実現した。
この結果,従来脆く割れやすいAl2O3セラミックスの破壊靭性をTi粒子の分散効果や柔らかさやにより向上させると同時に,絶縁体セラミックスに金属の様な電気伝導性を同時付与することに成功した。
さらに,この複合材料をアルカリ溶液中での化学反応や熱処理によりTiを選択的に酸化させて表面にナノポーラス構造やナノロッド構造のチタニア(TiO2)相を形成させることにも成功し,これにより有機物を分解する光触媒機能を同時に付与できることをAl2O3/Ti複合材料において世界で初めて示したという。
研究グループは今回の研究により,力学的機能が優れるばかりでなく,電気伝導性による,たとえば放電加工性などの機能を付与したセラミックス基材料としての応用や,表面に汚染物質分解や抗菌性などをもたらす光触媒機能を持つ新しい多機能型の複合材料として,工業製品や生体材料としての応用展開などが期待されるとしている。