大阪府立大学は,世界で初めてフレキシブルフィルム上にCCD構造を作製することに成功した(ニュースリリース)。
またこれを用いて,汗のpH値(水素イオン濃度)を高感度に計測できる,柔らかいウェアラブルデバイスのプロトタイプを開発した。
これまでのCCD構造では,半導体中の一部分に異なる不純物を添加することでダイオード構造を形成する必要があり,フレキシブルフィルム上ではそれが困難だった。そこで,デバイス構造を工夫することで,材料への不純物添加なしでCCD構造を形成できるように改良し,フレキシブルなCCD構造を実現した。
特にトランジスタ材料と電極のショットキー接合障壁を電圧により調整する構造を取り込むことで,電荷転送型のフレキシブルpHセンサーの作製に成功した。ショットキー接合障壁とは,金属と半導体を接触させると、それぞれの材料が持つ物性特性に応じて金属と半導体の接合部分に生じる壁。
CCD構造にすることで,市販されているpHセンサーと比べ感度が4倍以上と高くなり,また柔らかいセンサ-構造により絆創膏のように皮膚に貼ることで汗中のpH値を常時計測することが可能になった。
電気化学手法による化学センサーは,皮膚温度や室内温度の変化により出力結果が変動してしまうため温度に応じて結果を補正する必要がある。そこで,塗布形成で作製可能なフレキシブル温度センサーの集積化も行なった。
この研究では,酸化スズとカーボンナノチューブの混合溶液を生成し,それを塗布形成することにより非常に安定した温度センサーの作製に成功した。まだ完璧ではないが,約1週間の長期温度計測において±0.3℃以下の誤差で計測が可能であることを確認したという。この温度センサーは,皮膚温度を計測するのみではなく,pHセンサーの温度補正をするのにも必要になる。
この技術は,将来,汗中に含まれる低濃度の化学物質(例えば,糖成分やナトリウムイオン,カリウムイオン及びそれらに起因する化学物質)または皮膚ガスに含まれるにおい物質などの濃度変化の計測を実現するための基礎技術ともなるという。
研究グループは,今回の研究により,糖尿病の予防および診断,熱中症予防など予防医学や健康管理のためのデジタルヘルスのツールへの展開が期待でき,医療費削減,孤独死予防,医師・看護師の負担軽減など,さまざまな社会問題の解決につながる可能性があるとしている。