名古屋大学は,物質・材料研究機構(NIMS)との共同研究で,高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用い,分子が自発的に集合するプロセス(自己組織化)をリアルタイムで観察することに成功した(ニュースリリース)。
自己組織化とは,DNAの二重らせんやタンパク質の高次構造,生体二分子膜などに見られる,分子が自発的に組織化して特異な構造や機能を生み出す現象。
分子の自己組織化現象は,ナノスケールの有機材料をボトムアップ的に創製するアプローチとして注目を集めているが,分子の振る舞いを分子レベルかつリアルタイムで捉えることは非常に難しく,この研究分野のさらなる進展を阻んでいた。
今回研究グループは,高速AFMを用いて,ポルフィリン誘導体の自己組織化プロセスをリアルタイムで観察することに成功した。ポルフィリン誘導体は,環状構造を持つ有機色素化合物。機能性分子として天然に広く存在する。例えば,酸素運搬を担うヘモグロビンや,光合成反応中心の光捕集系に見られる。
さらに,高速AFMの探針によって分子集合体を分断するトップダウン的手法と,分子の自己組織化(ボトムアップ的手法)とを組み合わせ,まるで「手術」をするかのように,分子の集合体を分子レベルで操作・改変することに成功した。
研究グループはこの研究により,自己組織化メカニズムについて分子レベルの新たな知見を与えるだけでなく,自己組織化を制御するための新手法として,今後の材料創製研究に新たな展開をもたらすことができるものだとしている。