東工大ら,アモルファスの粘度を上げるユニットを開発

東京工業大学,東北大学は共同で,高分子鎖の末端に導入するだけでアモルファス高分子に3次元的な高次構造を誘起し,劇的な粘度の上昇をもたらす分子ユニットを開発した(ニュースリリース)。

高分子で3次元の規則的な構造を誘起することは,ナノパターニング材料をはじめ,物質輸送材料やフォトニック材料の開発など様々な分野で重要視されている。その実現のためには,自己集合(ミクロ相分離)を起こすブロックコポリマーを用いるのが一般的。一方で,高分子の末端部位のみを修飾したテレケリックポリマーでは,高分子鎖全体に対して末端ユニットは重量比が非常に小さいため,一般に高次構造の誘起は困難であると考えられてきた。

研究グループは,特異な置換パターンを持つトリプチセン誘導体を,広く産業で用いられているポリジメチルシロキサンの末端のみに導入した新たな分子を作製。このテレケリックポリマーの構造を調べたところ,トリプチセンが入れ子状に自己集合した2次元シートが,規則的に積層して3次元構造を形成することを発見した。この構造変化によって,室温で液体だったポリジメチルシロキサンの粘度が1万倍以上に上昇したことで固体化し,熱可塑性を付与できることも明らかとなった。

このトリプチセン分子ユニットは,一見大きな会合力を持たないように見えるが,分析してみると非常に高い自己集合能力を持つ新しい会合性分子であることがわかった。このような高分子の末端修飾法は,様々な高分子系にも適用できると期待されるという。また,置換基の位置のみが異なるトリプチセン誘導体を導入しても上記のような構造化は全く示さないという興味深い結果も得た。

これにより,このトリプチセン分子ユニットによる高次構造形成能を活かしたナノパターニング材料,物質輸送材料などの開発や,粘度の大幅上昇を利用した熱可塑性材料などの開発が期待されるという。さらに,この系では水素結合を利用していないことから,これらの高分子は水素結合を阻害する水分の存在下での使用も可能だと考えられるという。

研究グループは現在,さらに高い会合能を持つ分子ユニットの開発を検討しており,今後,この末端修飾法の様々な高分子系への適用が期待されるとしている。

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