京大ら,脊椎動物の視覚進化モデルに新説を提唱

京都大学と岡山大学の研究グループは,これまで脊椎動物の脳内で働いていると考えられていた光センサーが眼でも機能していることを見いだし,従来の脊椎動物の視覚進化モデルを修正する新たな進化モデルを提唱した(ニュースリリース)。

脊椎動物は高度に発達したを持つ。約25年前,ロドプシンや錐体視物質のアミノ酸配列を決めることで,実験的に明所視(色覚)と暗所視の進化の道筋が明らかにされた。ロドプシンや錐体視物質のアミノ酸配列を決めると,その比較からどちらが先に進化したのか(先祖型なのか)を推定することができる。その結果,脊椎動物の祖先は吸収する光の波長の異なる複数の錐体視物質を先に創り出し,その後にロドプシンを創り出した、と考えられてきた。

これは,先に明所視から色覚の進化があり,その後に高度な暗所視の進化が続いた,ということを示し,それまでの推測とは逆の結果。この進化モデルは当時非常にインパクトがあり,今では多くの教科書でも記述されるほど広く知られるものとなっている。今回,研究グループは,この定説を修正する発見を行なった。

研究グループは,ロドプシンや錐体視物質にアミノ酸配列が近い光受容タンパク質ピノプシンに注目した。このピノプシンは,ニワトリの脳内から見つかった光受容タンパク質。他の鳥類や爬虫類でも脳内で機能し眼では機能していないことが示されており,専ら視覚以外の光受容機能(例えば,光環境の変化から時刻を知る)に関わると考えられていた。

しかし,研究グループは,脊椎動物の進化の初期に系統的に分かれたと考えられる軟骨魚や古代魚のゲノムにもピノプシン遺伝子が存在することを見いだした。そして実際に軟骨魚や古代魚では,ピノプシンは脳内だけでなく,眼にも存在することがわかった。また,両生類のカエルでもピノプシンは眼にも存在していた。さらに,ピノプシンのタンパク質の性質もロドプシンと非常によく似て,薄暗がりの視覚に向いていることが分かった。

これらの結果は,ピノプシンは元々,ロドプシンと同様に薄暗がりで眼で働く視細胞である桿体の光受容タンパク質として進化したものの,その後,脳内での光受容機能に特化するように変化した,ということを示しているという。

ピノプシンのアミノ酸配列をロドプシンや錐体視物質と比べると,錐体視物質が創り出される最初期にピノプシンも創り出されていることが分かる。この時点で既にピノプシンを使って暗所視を実現できていた可能性が高く,その後,ロドプシンを創り出すことでより高度な暗所視を実現したという。これらのことから,「色覚の進化が先で、暗所視の進化が後」という定説を修正し,「色覚と暗所視の最初期の進化は並行して起こった」と推測した。

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