市大,人工光合成における生体触媒と人工補酵素の相関を解明

大阪市立大学は,「可視光エネルギーにより効率的に二酸化炭素をメタノールに変換する人工光合成技術」を達成するための鍵となる,ギ酸のホルムアルデヒドへの還元を触媒するアルデヒド脱水素酵素と人工補酵素(還元型メチルビオローゲン)との相関解明に成功した(ニュースリリース)。

二酸化炭素のギ酸への還元を触媒するギ酸脱水素酵素(FDH)を用い,電子供与体,光増感剤,電子伝達体を共存させることで,光エネルギーを駆動力として二酸化炭素からギ酸を生成することができる。研究グループは,この系にアルデヒド(AldDH)及びアルコール脱水素酵素(ADH)を用いることで,二酸化炭素からギ酸・ホルムアルデヒドを経てメタノールを生成している。

しかしながら,その還元効率は極めて低く,光照射240分後のメタノール生成量はわずか0.55μMだった。その原因の一つとして,補酵素として機能するMV•+と3つの脱水素酵素とのそれぞれの相互作用が明確になっておらず,二酸化炭素をメタノールへ効率的に還元するための3つの脱水素酵素の最適濃度を決定できていないことがある。

加えて,二酸化炭素からメタノールを生成する過程において,中間生成物であるギ酸やホルムアルデヒドを速やかにメタノールに変換する必要がある。これまで研究グループは,二酸化炭素のギ酸への還元反応における「FDHとMV•+及びその誘導体との相互作用」,さらにホルムアルデヒドのメタノールへの還元反応における「ADHとMV•+との相互作用」について,酵素反応速度論的に解明してきた。

しかしながら、AldDHが触媒する「ギ酸のホルムアルデヒドへの還元反応に対するMV•+の補酵素機能」については生成するホルムアルデヒドの定量が困難であり,解明されていなかった。

今回,困難であったホルムアルデヒドの定量を原料ギ酸の減少量から見積もれる技術を確立した上で、「ギ酸のホルムアルデヒドへの還元反応におけるAldDHとMV•+との相互作用」を酵素反応速度論的に解析することに成功し,AldDHとMV•+との親和性を示すミカエリス定数と呼ばれるKmや,触媒回転数と呼ばれるkcat等を明らかにすることができた。

研究グループは今回,ギ酸のホルムアルデヒドへの還元を触媒するAldDHと人工補酵素との相互作用の解明が進んだことで,3つの脱水素酵素の最適濃度を決定し,高効率で二酸化炭素をメタノールに光還元する系の構築を目指すとしている。

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