ImPACTプログラム「セレンディピティの計画的創出」の研究グループは,細胞の高速イメージングと深層学習を用いた画像解析で細胞を高速に識別し,その解析結果に応じて所望の細胞を分取する基盤技術「Intelligent Image-Activated Cell Sorter」を開発した(ニュースリリース)。
バイオイメージングにおいて,個々の細胞から得られる情報量と,解析可能な細胞数はトレードオフの関係にあり,多様な細胞を網羅的に研究するうえで障壁となっていた。
開発した「Intelligent Image-Activated Cell Sorter」は,大量な細胞集団に含まれる一つ一つの細胞を高速に撮像し,深層学習などによりそれらの画像をリアルタイムに判別し,細胞集団の中から特定の細胞を分取する基盤技術。
この技術は,免疫学,病理学,微生物学,分子生物学,遺伝学,再生医学,移植など多岐にわたる分野で基盤技術として活用されている高速細胞分取技術「Fluorescence-Activated Cell Sorter」に顕微イメージング活性化(Image-Activated)と深層学習(Intelligent)を融合したもの。
これにより,技術の汎用性を示す実験として,3μmから30μm程度の異なるサイズの種々の細胞の高速撮像,がん患者の血液中にわずかに含まれる循環がん細胞様細胞の画像による発見などの例を示した。
また,細胞を識別するアルゴリズムも,従来の画像処理アルゴリズムから最先端のコンボリューショナル・ニューラル・ネットワークまで幅広く対応可能することを実証した。
さらに展開として,光合成やバイオ燃料の研究に使われる緑藻類クラミドモナスと血液中に含まれる血小板を1秒間に約100回のスピードで撮像・判別・分取できることを示した。そして,クラミドモナスの実験においては,20万個以上の細胞の中に1%程度含まれる希少な遺伝子変異を引き起こした細胞を分取・培養する事に成功した。
また,血小板の実験においては,血小板の複数の形態を見分けて血液中に含まれる凝集血小板を分取する実験に成功した。
研究で開発した装置は,社会実装を加速することを目指し,国内外の研究者によるオープン利用展開を始めた。さらに,関連技術の事業化を進めるために株式会社CYBOをImPACT発ベンチャーとして設立した。
この新たな基盤技術により,生命科学分野における様々な発見やバイオ産業や医療分野での開発が大きく発展するとしている。