原研,状況により適切なレーザー溶断・破砕が可能な技術を開発

著者: sugi

日本原子力研究開発機構(原研)は,レーザーの切断性能の状況を反射光により時間とともに変化する状況を監視し,切断性能が低下する兆候を検出した場合には,レーザー出力や切断速度を調整するなど状況変化に合わせて,常に適切な切断性能の維持が可能な適応制御装置を開発した(ニュースリリース)。

レーザー光による切断では,予め切断対象となる構造物の諸情報を用意しておく必要がある。しかしながら,福島第一原子力発電所の燃料デブリのように形状や材質などの情報が無い場合もある。研究では切断性能の状況を時間とともに変化する状況を監視して,切断性能が低下する兆候を検出した場合には,レーザー出力や切断速度を調整し,常に適切な切断性能を維持する制御装置の確立を行なった。

燃料デブリなどの取出しを行なおうとする場合,不規則表面形状(凹凸)を持つ金属材料とセラミックス材料の混合物に対処する必要がある。このため,不規則表面形状をレーザースキャナにより認識し,これに基づいてレーザー加工ヘッドをx-y-z 3軸ロボットにより制御する装置を構築した。更に,金属材料に対するレーザー連続照射による溶断と,セラミックス材料に対するレーザーパルス照射による破砕の各動作を,ロボット制御と連動させる機能も付加した。

機能の性能確認として,不規則表面形状を持つ炭素鋼の上面にセラミックス材料(アルミナペレット)を接着した試験体に対し,レーザースキャナにより表面形状を認識した後,レーザー光の連続 / パルス照射をロボット動作と連動させて溶断 / 破砕を行なった。この結果から,不規則表面形状を持つ金属材料とセラミックス材料の混合物を的確に溶断 / 破砕でき,この制御装置は福島第一原子力発電所の燃料デブリ取出し作業に適用可能な工法であることを確認した。

レーザー溶断時には,レーザー照射によって反射光が発生する。レーザー光によって溶けた金属が良好に排出できている(切断良好)時には,反射光信号は低く安定しているが,排出が良好に行なわれなくなる(切断不良)と,反射光信号は急激に増加するとともに大きく振動するようになるという。

今回,試験片の厚みが裏側で2mmから50mmまで徐々に増加する形状不定材料を対象とした溶断適応制御試験で,試験片の厚み増加に従って変化する反射光特性に応じて,レーザー出力とアシストガス圧力の回復・緩和動作によって溶断性能が維持され,最大厚み50mmまでの溶断が適切に行なわれることを確認した。

これらの研究により,レーザー溶断・破砕 適応制御装置の基礎基盤的観点からの基本性能が確認できたことから,今後は応用研究を主体としたフェーズに移行する予定。平成30年度からは,「ふくいスマートデコミッショニング技術実証拠点」設備を用い,実機適用性能を実証していく。

キーワード:

関連記事

  • アマダ,ブルーレーザーを搭載した3次元レーザー統合システムの受注を開始

    アマダは,3次元レーザー統合システム「ALCIS-1008e」のブルーレーザー発振器・スキャナーヘッド仕様の正式受注を開始した(ニュースリリース)。 「ALCIS(AdvancedLaserCubeIntegratedS…

    2025.11.07
  • 東大ら,MoS2エッジ表面加工の分光測定に成功

    東京大学,東北大学,京都大学は,レーザー加工と顕微分光を用いることで,触媒活性サイトが存在していると考えられてきた二硫化モリブデン(MoS2)のエッジ表面における電子状態と化学反応を選択的に直接観測することに成功した(ニ…

    2025.10.30
  • 【探訪記】最新レーザー技術を体感する,IPG「Fiber Laser Days」レポート

    IPGフォトニクスジャパンは7月25日,愛知県安城市にある中部テクニカルセンターにて,同社の製品・技術を紹介する見学会「Fiber Laser Days」を開催した。同センターは同社のレーザーを用いた加工試験を実際の材料…

    2025.09.18
  • 東大ら,ガラスへの穴あけ加工を100万倍高速化

    東京大学とAGCは,従来の100万倍高速かつ超精密に,ガラスなどの透明材料を加工できる手法を開発した(ニュースリリース)。 ガラスへのエッチングを使わない加工技術として,レーザー加工が注目されている。研究グループは201…

    2025.06.13
  • 東大,半導体ガラス基板へ微細レーザー穴あけを実現

    東京大学の研究グループは,半導体基板用ガラスへの極微細レーザー穴あけ加工技術を開発した(ニュースリリース)。 露光技術の進歩に伴い,半導体チップは微細化するとともに大面積化も進んでいる。それとともに,半導体チップを実装す…

    2025.06.02
  • santec,1kW対応近赤外レーザー加工用LCOS発売

    santec,1kW対応近赤外レーザー加工用LCOS発売

    santec AOCは,1kWクラスの近赤外線レーザー加工向けLCOS型空間光変調器「SLM-310」を発表した(ニュースリリース)。 反射型LCOS(Liquid crystal on silicon)空間光変調器(S…

    2025.05.27
  • 宇大,紙への高精度で低変色なレーザー切断を実現

    宇都宮大学の研究グループは,150フェムト秒の時間幅を有するフェムト秒レーザーパルスを用いたアブレーションによって,高精度かつ変色の少ない紙の切断加工を実現した(ニュースリリース)。 紙のレーザー加工は,プログラムによる…

    2025.05.08
  • 三重大ら,原発瓦礫のセシウムをレーザーでガラス化

    三重大学,海洋研究開発機構,太平洋コンサルタント,帝塚山大学,東電設計は,レーザーを援用したその場固定化により,コンクリート中にセシウム (Cs)を閉じ込めてガラス体を形成することに成功した(ニュースリリース)。 福島第…

    2025.04.21

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア