新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,国際標準化機構(ISO)から,光触媒の性能試験方法に関する国際規格(ISO19652)が,2018年3月23日付けで正式に発行されたと発表した(ニュースリリース)。
光触媒(主に紫外光に応答する酸化チタン(TiO2))は,光照射下で酸化・還元作用によって,空気浄化・脱臭,水質浄化,抗菌,抗かび,抗ウイルス,セルフクリーニングなど,多くの優れた機能を有することから,その応用が拡大している。特に,外装材など屋外用途が主要であった光触媒製品は,室内環境問題への関心の高まりとともに,室内での適用が進んでいる。
そこでNEDOでは,室内光に多く含まれる可視光を利用して室内環境でも高い効果を得ることができる光触媒の開発を目的に,「循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクト」を実施した。
可視光応答型光触媒は,これまで多くの製品が開発されているが,それらの多くは対象物質を部分的にしか分解することしかできず,完全に酸化分解できないことがあった。これに対して,NEDOプロジェクトでは,日常生活空間にある可視光で,シックハウス症候群などの原因とされるアセトアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)を,これまでの可視光応答型光触媒と比較して10倍以上の高活性で完全に酸化分解できる新しい光触媒を開発した。
さらに,プロジェクトの成果により,このほかにも数多くの実用的な可視光応答型光触媒が製品化され,それらの特性に応じた各種の性能評価方法の標準化も進められてきたが,これまで,可視光応答型光触媒の性能を評価する試験方法が体系的に国際標準化されておらず,光触媒製品の海外普及を進めていく際の課題となっていた。
このため,日本ファインセラミックス協会では,NEDOプロジェクト「可視光応答型光触媒の性能評価方法に関する標準化事業」で,まず,2012年6月に日本工業規格(JIS)化に向けた提案を行ない,2013年2月にJIS R1757(ファインセラミックス−アセトアルデヒドを用いた可視光応答型光触媒の完全分解性能試験方法)として国内で規格化された後,2013年4月に国内で作成した国際規格原案(NP19652)をISO/TC206(ファインセラミックス)/WG9(光触媒)に提案した。
ISO/TC206の活動は,国際幹事と,WG9のコンビナを,日本から輩出しているなど,日本が主導している。国際規格原案の提案から約5年間,光触媒工業会を中心とした国内の主要な光触媒企業,大学,産業技術総合研究所などのメンバーが国際会議に参画して,専門家との議論・調整を重ねてきた結果,可視光応答型光触媒の有害物の分解性能試験方法がISO19652として初めて国際規格化されて,2018年3月23日に正式発行された。
この規格発行により,海外市場において日本製の可視光応答型光触媒製品の性能を適切に評価できる環境が実現するとともに,信頼性の高い光触媒製品の国際競争力の強化が期待されるとしている。