東大,スピン波による情報処理チップデバイスを提案

東京大学の研究グループは,スピン波を利用した多入出力情報処理チップデバイスを提案し,それを用いた物理リザバーコンピューティングが実現可能であることを数値シミュレーションにより実証した(ニュースリリース)。

人工知能の主要技術である人工ニューラルネットワークの一つとして,時系列信号の学習に適したリザバーコンピューティングという情報処理の枠組みが知られている。

近年,ニューラルネットワークの,代わりに様々な物理現象を利用した物理リザバーコンピューティングが提案されてきたが,人工知能用ニューロン間結合に相当する配線が必要なものか,配線を必要としなくてもチップとして実装することは困難であるものに限られており,大規模システムを集積化するのに適した実装方法は提案されていなかった。

研究グループは,まず,ガーネット磁性薄膜上でスピン波の励起(入力)と検出(出力)を行なうデバイス構造を考案し,材料定数,外部バイアス磁場を調整してスピン波が非線形干渉を起こす設定を発見した。この様なスピン波の挙動はこれまで報告がない特徴的なものであることがわかった。

次に,このスピン波デバイスに基づいたリザバーコンピューティングが可能であることを示すため,入力時系列信号に応答して生成されたスピン波の時空間パターンから入力時系列信号のもつ特徴を抽出するように,サンプル信号を用いて学習を行なった。

その結果,未知の入力時系列信号に対しても,それがもつ特徴を高い精度で推定できた。これは,スピン波デバイスを用いたリザバーコンピューティングが汎化能力を獲得したことを示しているという。

提案したデバイスは,波動現象により高密度で柔軟なニューロン間結合に相当する働きを無配線で実現し,かつチップとして実装することが可能なので,大規模システムの集積化に適している。このようなデバイスは,IoT社会を推進するために不可欠な超低消費電力高性能端末機器の実現につながることが期待されるとしている。

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