東京理科大学の研究グループは,民生用デバイスを活用することで,超小型衛星CubeSAT用としては世界最高速クラスの演算能力を実現する搭載計算機と6方向同時撮像カメラシステムを開発し,東京大学開発の超小型衛星TRICOM-1R(たすき)に搭載,2月3日に航空研究開発機構(JAXA)のSS-520 5号機により打ち上げられた(ニュースリリース)。
研究グループではスペースデブリの除去技術,特に画像によるデブリへの接近誘導技術について研究を進めていく中で,そのキー技術となる搭載計算機と小型カメラの開発を進めてきた。これらの技術は,軌道上デブリの除去だけでなく,様々なミッションへの応用が可能で,これまでIKAROSやはやぶさ2,「こうのとり」での導電性テザー実験などに活用されてきた。
超小型衛星CubeSATは,開発並びに打ち上げコストが圧縮できる事から,近年世界的に急速にその利用が広がりつつある。その利用が広がるにつれて,ミッションの要求も複雑になり,衛星の機能を制御する搭載計算機の演算能力への要求が急速に高まりつつある。
今回実証された搭載計算機は,CubeSATに搭載可能な10cm角の大きさでありながら,大型衛星の搭載計算機をも凌駕する360MIPS,1.4GFLOPSの演算能力と,2GByteを超える情報蓄積機能を有しており,複雑化していくミッションに十分対応できる能力を有している。
6方向同時撮像カメラシステムは,IKAROSやはやぶさ2に活用された画像取得処理システムを中核として,6方向に配置された様々な種類のカメラヘッドの画像を取得・処理するシステムに拡張すると共に,CubeSATに搭載可能な10cm角のサイズで実現した。様々な種類のカメラヘッドを目的に応じて接続して使うことで,世界でも類を見ないミッションの要求に柔軟に対応することができる能力を有する。
TRICOM-1Rは,昨年打ち上げられたTRICOM-1と比較して,即時観測ミッションが追加になったが,この様なミッションの追加を実現する上で,6方向同時撮像カメラのカメラヘッドを柔軟に交換できる能力が重要な役割を果たしたという。
今回の実証により実現された技術は,超小型衛星の可能性を広げ,その利用を一層加速させるものだとしている。