東京大学の研究グループは,電磁濃縮法という超強磁場発生方法で985テスラという強力な磁場を発生し,それを高精度に計測することに成功した(ニュースリリース)。
室内での実験,かつ高度に制御された磁場として,これまでの世界最高記録730テスラ(2011年,同研究グループ)を大幅に更新し,1000テスラ目前まで到達した。
今回,独自に開発したシミュレーションにより,電磁濃縮用の高効率磁場発生コイルを用いて,種磁場の値を調整することによって,より強力な磁場が発生できることを,高い信頼性で予測した。
他方,1000テスラ近くでは,強烈な電磁ノイズ,磁束の高速収縮に伴う衝撃波,その他電気絶縁破壊等の問題により,電気的な測定では600テスラ程度の測定が技術的な限界だった。
そこで研究グループは,光学的な測定手法であるファラデー回転を用いた。それでも,磁場の上昇とともに試料空間が高速に収縮し,それが測定プローブ近くに接近すると強烈な閃光が発生し強烈なノイズとなるため,光学的な測定は容易ではなく,さまざまな工夫と高度な計測技術によって,磁場の最高到達点近傍まで精密に測定することを可能にした。
これにより1000テスラという超強力な磁場が発生可能であること,また,今後,1000テスラ領域での極限的な超強磁場環境での物性計測が可能であることを示した。この発生磁場は空間的にも時間的にも人工的に制御可能で,しかも,さまざまな信頼性ある物理計測が可能なため,半導体,ナノマテリアル,有機物質,超伝導体,磁性体で未解明の固体物理量子現象の解明により強力な手段を手に入れたとも言えるとしている。