奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)センシングデバイス研究室助教の岡田豪氏は,1月11,12日に開催された「第56回セラミックス基礎科学討論会」において,「Best Presentation Award」(国際賞)を受賞した(ニュースリリース)。この賞は,国際セッションにエントリーされた35歳未満の若手研究者による発表(英語口頭発表)24件の中から最も優れた発表1件に与えられるもの。
受賞した論文のタイトルは「Development of Rare-earth-doped Garnet Scintillators Emitting NIR Light」。シンチレーターとは放射線エネルギーを「光」に変換する蛍光体だが,従来のシンチレーターは近紫外や可視光に変換するものが殆どであった。一方,この研究では近赤外光に変換するシンチレーターを開発した。近赤外光に変換するシンチレーターは従来のシンチレーターでは困難であった高線量の放射線計測や生体イメージングへの応用に期待される。
研究で作製したシンチレーター材料はガーネット結晶(Y3Al5O12およびY3A12Ga3O12)に異なった濃度の希土類イオン6種(Nd,Sm,Ho,Er,TmおよびYb)を添加したものであり,全60種類にのぼる。これらシンチレーターを総合的に評価したところ,全体的にY3A12Ga3O12よりもY3Al5O12をホストとした場合にシンチレーション強度が高い事がわかり,その最適添加濃度はおよそ5-10%であった。
また,最も効果的な希土類イオンはNd,SmおよびYbである事が確認された。これらシンチレーション過程をRobbinsモデルに基づいて解析した結果,シンチレーション強度はエネルギー移動効率および発光中心の発光効率(フォトルミネッセンス量子収率)に強く依存する事が確認された。
さらに,エネルギー移動効率は結晶の品質に殆ど依存しない事が明らかになり,一方で添加した希土類イオンの種類に依存する事が明らかとなった。この事より,高いシンチレーション強度を得る為には発光中心として適切な希土類イオンを選択する必要があるという新たな知見を得たとしている。