国立天文台,ブラックホールの自転が電波を強める可能性を発見

国立天文台の研究グループは,ブラックホールの自転が,宇宙の遠方から届く電波の源である高速ジェットの形成に役立っている可能性があることを,多数の超大質量ブラックホールを調べることで明らかにした(ニュースリリース)。

ブラックホールは,光をはじめすべての電磁波を吸収するため,その姿を直接見ることはできない。しかし,ブラックホール周辺では,その中心へ向かって落ち込みながら超高温になった物質で降着円盤が作られ,そこからの光が見える。

多くの銀河の中心には,太陽の数百万倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在し,降着円盤を持つブラックホールは電波を放つ天体として観測される。このような天体は「クエーサー電波源」または単に「クエーサー」と呼ばれる。ただし,その中で強い電波を放つクエーサーは1割程度にすぎない。

「電波が強い」クエーサーでは,降着円盤内の物質の一部がブラックホールに落ち込まず,ブラックホールの両極から高速のジェットとして吹き出していると考えられているが,どのようにジェットが形成されるのかはわかっていない。

研究グループは,超大質量ブラックホールの自転が高速ジェットの形成に役立っている可能性について研究した。ブラックホールの周囲と降着円盤から放射された酸素イオンの光を調べ,その強さを測定した。酸素イオンの光の強さから,中心のブラックホールの自転速度を計算できる。

8000個近くのクエーサーを解析した結果,電波が強いクエーサー,つまり高速ジェットを伴うブラックホールは,そうでないクエーサーに比べて酸素イオンの光が平均で1.5倍ほど強いことを見いだした。これはブラックホールの自転がジェットの形成に重要な要素であることを意味している。

この研究結果は,電波が強いクエーサーと弱いクエーサーの違いがブラックホールの自転だけで決まっていることを意味するわけではないが,自転速度が決めている可能性を示唆するものだとしている。

キーワード:

関連記事

  • 島津製作所、JAXA基金で量子スピン磁力計の開発に参画

    島津製作所は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金事業に採択された研究開発拠点「宇宙転用・新産業シーズ創出拠点“SX-CRANE”」に、代表機関である東京科学大の連携機関として参画する(ニュースリリース)。 S…

    2026.07.22
  • Orbital Lasers、宇宙用レーザー技術を活用した衛星LiDAR事業を紹介【光・レーザー関西2026】

    特別企画「航空・宇宙×光」ゾーンに出展しているOrbital Lasersは、宇宙用レーザー技術を活用したスペースデブリ(宇宙ごみ)除去と、衛星LiDARによる地球観測の取り組みを紹介している。 同社の技術開発は、スカパ…

    2026.07.16
  • 日本電気硝子、宇宙用超薄板カバーガラスのブランド「Starveil」を立ち上げ

    日本電気硝子(NEG)は、宇宙用超薄板カバーガラスの製品ブランド「Starveil(スターベイル)」を立ち上げたと発表した(ニュースリリース)。 Starveilは、人工衛星の太陽電池をはじめ、宇宙空間で使用される各種機…

    2026.05.25
  • 京都大学 特別教授 野田進教授

    フォトニック結晶レーザーが拓く「高輝度半導体レーザー」の次章

    半導体レーザーは小型、高効率という強みを持つ一方で、高出力化するとビームが乱れ「輝度」が伸びないという壁があった。フォトニック結晶レーザーはその常識を塗り替えつつある。その研究の先駆者である京都大学高等研究院・特別教授の…

    2026.04.02
  • 【主張】政策と技術を結ぶ日本の可能性

    世界最大の光学展示会 3月15日から米国ロサンゼルスでOFC(Optical Fiber Communication Conference and Exhibition)が開幕する。通信バブル崩壊後、存在感を失っていた同…

    2026.03.25

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア