京都大学の研究グループは,直径5~6ナノメートルの半導体ナノ粒子にレーザーパルス光を照射することで,光を吸収したナノ粒子内部の多数の電子が,量子力学的な相互作用により特殊な状態を作り出していることを初めて発見した(ニュースリリース)。
半導体ナノ粒子は化学合成によって作られるナノメートルサイズの微結晶。高い発光効率を示すことが知られており,すでに色鮮やかな液晶ディスプレーの発光体として使用されている。ナノ粒子の多彩な色を作り出すのは“量子閉じ込め効果”と呼ばれる量子力学的な現象で,電子を数ナノメートルの領域に閉じ込めることで生じる。
この量子閉じ込め効果を最大限に活かす研究として,光から電気エネルギーへの変換(光電変換)に利用する応用研究が世界的に進められている。特に,ナノ粒子では1つの光子から多数の電子を生み出すことができる 「マルチエキシトン」という状態について研究が行なわれている。
しかし,ナノ粒子が光を吸収して多数の電子を生み出す過程は直接的に観測することが難しく,これまで明らかになっていなかった。
そこで研究グループは,ナノ粒子の超高速な量子力学的変化を測定する手法を独自に開発し,ナノ粒子が光を吸収した直後の状態を観測することに成功した。研究では,照射する2本のパルス光の位相を制御することで,ナノ粒子内に作り出したマルチエキシトンの量子力学的な干渉効果を測定した。
その結果,マルチエキシトンが生成された直後は,レーザー周波数に追従して振動する量子力学的な状態(コヒーレント状態)を作り出していることを初めて観測した。さらに,マルチエキシトンを形成している電子と正孔の個数に応じて,レーザー周波数の1倍・2倍・3倍の周波数を持つ量子力学的な振動状態が生み出されることを世界で初めて発見した。
これらの量子状態は,1つの光子から多数の電子を生み出す駆動力になるので,ナノ粒子を光吸収体として利用した太陽電池や光検出器の高効率化につながるとしている。